男子テニスツアーのATP500シリーズ「ムバダラ・シティDC・オープン」（７月21日～27日／アメリカ・ワシントンDC／ハードコート）は大会最終日の現地27日にシングルス決勝を実施。第７シードのアレックス・デミノー（オーストラリア／大会時13位）がアレハンドロ・ダビドビッチフォキナ（スペイン／同26位）を5-7、6-1、7-6(3)で下し、今季初優勝並びに節目のツアー10勝目を飾った。

　崖っぷちからの大逆転だった。第１セットを接戦の末に落としたデミノーは失ゲーム１に抑えて第２セットを奪い返したものの、勝負のファイナルセットは先にブレークを許して2-5とリードされる苦しい展開。ダビドビッチフォキナのサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップとなった第９ゲームで起死回生のブレークバックを果たすも、直後の第10ゲームではデミノーが３本のブレーク及びチャンピオンシップポイントを握られ、万事休すかと思われた。

　それでもここはデミノーが鋭いバックハンドのダウンザラインと巧みなネットプレー、さらにはサイドラインギリギリに落ちる絶妙なロブなど好プレーを連発し、絶体絶命のピンチを脱出。第11、12ゲームを互いにキープしてタイブレークに突入すると、ここではデミノーが順調にポイントを重ね、チャンピオンシップポイントを１回で取り切って３時間３分にも及ぶ熱戦をものにした。

　一方のダビドビッチフォキナはこれでツアー決勝４連敗。今大会は準々決勝でテイラー・フリッツ（アメリカ／同４位）、準決勝でベン・シェルトン（アメリカ／同８位）のトップ10選手２人を撃破するなど素晴らしい勝ち上がりを見せたが、悲願の初タイトルにはまたしてもあと一歩届かなかった。
  　ちなみにダビドビッチフォキナは2022年の「モンテカルロ・オープン」（クレー／ATP1000）決勝でステファノス・チチパス（ギリシャ／元３位／現30位）に敗れ、今年２月の「デルレイビーチ・オープン」（ハード／ATP250）決勝ではミオミル・ケツマノビッチ（セルビア／現50位）を相手に２本のチャンピオンシップポイントを逃して逆転負け。同３月の「メキシコ・オープン」（ハード／ATP500）決勝ではトマーシュ・マハーチュ（チェコ／現22位）に敗れていた。それだけに“４度目の正直”への思いは相当だったはずだ。

　試合終了後にはベンチでタオルに顔を埋めながらひどく落胆するダビドビッチフォキナにデミノーが寄り添い、慰めの言葉をかける姿が見られた。その後挙行された表彰式でデミノーは残酷な結末を迎えたダビドビッチフォキナを次のように気遣った。

「君ほどの選手がまだ優勝トロフィー手にしていないなんて信じられない。君ならすぐに、絶対につかみ取れるはずだ。今日勝つべきだったのは君だった。今日の僕は運が良かっただけだと思う。君はツアーでも指折りのファイターで素晴らしい選手だし、誰も君との試合はやりたがらない。これで終わりじゃない。君はここからもっと上に行く選手だ」

　この結果デミノーは大会後に更新された世界ランキングで８位に浮上し、約１カ月半ぶりにトップ10に復帰。一方のダビドビッチフォキナも今回の準優勝でキャリア初のトップ20入り（19位）を果たした。

文●中村光佑

【動画】デミノーVSダビドビッチフォキナの「ムバダラ・シティDC・オープン」決勝ハイライト

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