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海外テニス

“3人の子の母親”になった後も燻るプレーヤーの本能とテニスへの情熱。復活のクリステルスを後押ししたのは…

内田暁

2020.02.20

昨年のウインブルドンでレジェンドマッチに参加していたクリステルス。(C)GettyImages

昨年のウインブルドンでレジェンドマッチに参加していたクリステルス。(C)GettyImages

 トレーニングを開始してから最初の数カ月は、現実を受け入れることが最大の課題だったかもしれない。「子どもを3人産み、体幹があまりに弱っていて、自分でも笑っちゃったの」と、その頃を思い出し彼女は笑う。それでも6カ月経った頃には、身体が悲鳴をあげることに慣れ、むしろ欲している自分がいた。

「懐かしい感覚だった。実際にコートに立って動くとヒザや腰にも痛みが出てきて、トレーニングとコート上の動きは違うということがわかったし。全てがチャレンジだった。でも私はチャレンジが好き。自分を追い込むことが好き。トレーニングを始めたらすぐに熱中し、打ち込んでいた」。

 そうまでして自分を追い込むかつての世界1位に、周囲は「目標は何か? 何をすれば成功と思えるのか?」と尋ねたという。
 繰り返し聞かれるその問いへの、彼女の心の声はいつも同じだった。
 
「今ここでやっていること自体に、すでに価値がある。目標を持ち、チャレンジし、自分を高める。成功は何かって? かつていたツアーレベルで、ハードコートで3セットを戦い、戦いを楽しめる地点まで来たと思えることが、最初のゴール」。
 そのゴールに到達したと思えた時、彼女は世界に向け、自身の決意を表明する。

「もし3人の母親であり、同時に、最高のアスリートでもありえたら? 挑戦してみよう。もう一回、カムバックしよう!」
 そう語るメッセージ動画を公開したのが、昨年9月のこと。家族に想いを打ち明けた時から、約8カ月が経っていた。

 ツアーで最も愛された選手の一人であるクリステルスの復帰戦の舞台には、初出場のドバイ・テニス選手権が選ばれた。どこか初々しさを纏う彼女は、通路奥で入り口や出場のタイミングをスタッフに確認すると、万雷の拍手と照明を浴びながらセンターコートへと歩み出る。復帰戦の相手は、ガルビネ・ムグルサ。先の全豪オープンで準優勝した、言わずと知れたトッププレーヤーである。
 
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