専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

“3人の子の母親”になった後も燻るプレーヤーの本能とテニスへの情熱。復活のクリステルスを後押ししたのは…

内田暁

2020.02.20

試合後に握手を交わすクリステルス(右)とムグルサ(左)。(C)GettyImages

試合後に握手を交わすクリステルス(右)とムグルサ(左)。(C)GettyImages

 第1セットのクリステルスは、往時と変わらぬ破壊力溢れるフォアを打つも、その軌道は定まらず、サービスも安定しない。後に彼女はその理由を、「初めてのスタジアムで、夜の練習もほとんどしてこなかった。暗い空とライトでタイミングがつかみにくかった」と明かしている。第1セットを2-6で落とし、第2セットも0-3とリードされた時には、このレベルで戦うのはまだ無理かと思われた…。

 だがここから、彼女はかつてのように「試合に入り込み」はじめる。左右に打ち分け相手を振り回すと、身体ごとボールに飛び込むようにフォアを豪快に打ち込んだ。代名詞である攻守一体のスライディングも、時折飛び出し客席を沸かせる。

「自分が支配していると感じるポイントも幾つかあった」という本人の皮膚感覚は、見ていた者たちの客観的な印象でもあっただろう。追いつき、再び突き放されそうになっても食らいつき、第2セットはタイブレークにもつれ込む接戦に。
 
 最後は、ムグルサのサービスで終止符が打たれたが、その姿は彼女が当面の目標に掲げた、「ツアーレベルで戦える地点」に戻っていることを示すに十分だった。

「負けたかもしれないが、この試合は私にとって、すでに一つの勝利でもある」
 試合後の彼女はSNSに、そのようなメッセージを綴っている。

 復帰の決意を公にした時、彼女は「私は、他人に何かを証明したいとは思っていない」と言っていた。それでも2度目の復帰戦で、クリステルスが世に証明したことがある。それは、今の彼女は解説者でもレジェンドでもなく、紛れもないテニスプレーヤーだということだ。
 
文●内田暁

【PHOTO】ボールがつぶれ、フェイスがたわむ! 3/1000秒の瞬間を捉えたスーパーインパクト集!!
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号