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海外テニス

「最後のロウソクの火を彼が消してくれた」錦織圭の全米オープンに終止符!20歳の坂本怜が憧れの背中を越えた日<SMASH>

内田暁

2026.08.30

キャリア最後の全米オープンは、予選敗退という形で幕を閉じた。それでも錦織の戦いは、まだ終わらない。その視線の先には、数週間後に控えるジャパンオープンのコートがある。(C)getty Images

キャリア最後の全米オープンは、予選敗退という形で幕を閉じた。それでも錦織の戦いは、まだ終わらない。その視線の先には、数週間後に控えるジャパンオープンのコートがある。(C)getty Images

 勝者がオンコートインタビューを受けるその間、錦織はベンチに呆然と座っていた。

「最後のロウソクの火を、彼が全て消してくれた――」

 最後のグランドスラム大会を終えた寂寥感を、彼は淡く美しい言葉で綴った。

 坂本のインタビューに続き、錦織の功績を称えるセレモニーが、大観衆の見守る中で行なわれた。

 会場のそこかしこに刻まれた思い出の数々を振り返り、ファンへの謝意を述べた錦織は、こう続けた。

「負けたのは残念だけれど、怜が勝ったのはうれしい。彼は次の日本のトッププレーヤー。早くトップ10に入って欲しいと思っている」

 そのエールを耳にして、坂本は「そんな簡単に言うなよ」と、心のなかで苦笑いした。錦織の背を追い続けてきた彼だが、「近づけば近づくほど、遠いな」と感じてきたという。

「ランキングが少し上がったり、圭君が現役だった時の年齢に自分が近づいていくたびに、やべえなっていうのしか出てこない」

 錦織は18歳の時点で、ATPツアーで優勝し、全米オープンでは世界4位の選手を破り、トップ100入りも果たしている。その足跡を自身と重ねながら、坂本は「錦織選手のようになりたい」という夢への距離を測ってきたのだろう。

「まあ、でも...」と、短く言葉を切って彼は言う。

「グランドスラムで優勝したいと思ってるんで。その期待に添えるように頑張ります」...と。
 
 錦織に勝った坂本は、グランドスラムとしては通算2度目、全米オープンでは初の本戦へと挑む。

「ビビらず、大きいテニスして。今日はサービスも良かったし、アグレッシブなプレーもできていた。それをちゃんと出しながら、結果にこだわらず、次の試合から一つでも成長できるようにという気持ちです」

 20歳は、まっすぐに前を向いた。

 他方で錦織は、まずは休み、心身のリカバリーに努める予定。一度は「火が消えた」と感じたが、ひとたび練習を始めれば、「やる気が自然と湧いてくる」ことはわかっている。

「練習したい気持ちは、全然あるんで」

 ポツリ、ポツリと言葉を紡ぐ彼は、表情に色を灯して言った。

「ジャパンオープンに向けて、最後に最高な試合で、怜にリベンジしたいですね」

 ニューヨークで交錯した2人は、しばし各々の道を歩む。数週間後の東京で、再び交わることを願って――。

現地取材・文●内田暁

【動画】錦織と坂本による「全米オープン予選決勝」ハイライトと「試合後のセレモニー」の様子

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