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海外テニス

賛否が交錯するジョコビッチの下位選手救済案。救う側の内山靖崇と、救われる側の高橋悠介、それぞれの思いは?【男子テニス】

内田暁

2020.05.07

現在400位台の高橋は、支援を受けることに複雑な心情をのぞかせながらも、強くなって恩返ししたいとも語る。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

現在400位台の高橋は、支援を受けることに複雑な心情をのぞかせながらも、強くなって恩返ししたいとも語る。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 それは27歳という年齢、そしてツアーレベルに身を置いた今だからこそわかる、プロテニスの世界の道理だろう。そして、内山らの動向に目を向けその背を追う日本の後進たちが、感じている真理でもある。

 3年前の全日本選手権優勝者の高橋悠介も、その一人だ。「最低でもチャレンジャーで回っていける300位や、少なくても350位に早く行かないと」――当面の目標ラインを、高橋はそこに引く。

 現在のランキングは416位。20歳にして全日本を制し、ランキングも238位まで上げていた高橋は、そこからの2年半、苦しい時期を過ごしていた。肩書きや周囲の声を、気に留めたつもりはない。だが、自ずと上がる自分への期待は重圧となり、心身の歯車を狂わせていた。

 勝利に見放され、主戦場もチャレンジャーから再びフューチャーズへと落ちた時、目に映ったのは2つの大会群の間に横たわる、決定的な差異だった。

「フューチャーズだとコートはボロボロのこともあるし、初戦で負ければ、賞金はホテル1泊分で消えてしまう。ポイントも少ないし、先が見えない。でもチャレンジャーなら100位以内の選手もいるので、そのレベルで戦っているという自覚も出るし、上の選手の取り組みなども間近で見られます。チャレンジャーに定着し、そこでまず生き残るのが、金銭面でもモチベーションでも大事かなって思います」
 
 篤実な口調で一語一語つむぐ彼は、件の援助金に関しても、しっかりとした意見を持つ。

「まずはジョコビッチのようなトップ選手が、下位の選手のこともファミリーと捉えてくれているというか、『みんなで一緒に頑張ろう』というメッセージを感じるので、そういう考え方ができるのはすごいと思いました。

 ただ、自分が受け取る側としてどうかと考えた時……、確かに今は賞金はないですが、遠征費もない。賞金より遠征費が上回ることも多いので、それを考えると、救済金を受け取っていいのかと思ってしまいます。でもそう思えるのは、自分には三菱電機さんなどのスポンサーが付いているからで、世界で見れば僕よりランキングが上でもスポンサーのない選手はたくさんいる。そういう選手には支援金は必要だと思います。選手たちが辞めていけば、テニス界全体が弱ってしまうことになりますから」
 

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