専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

賛否が交錯するジョコビッチの下位選手救済案。救う側の内山靖崇と、救われる側の高橋悠介、それぞれの思いは?【男子テニス】

内田暁

2020.05.07

下位選手救済の基金創設を提唱したジョコビッチ。トップ100が寄付し、250位以下の選手に分配するという案だ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

下位選手救済の基金創設を提唱したジョコビッチ。トップ100が寄付し、250位以下の選手に分配するという案だ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 それでも、実際に基金が設立されたとすれば、その時には「強くなることで還元したい」と、穏やかな語り口に強い意志を込める。

「そのお金を使って強くなり、下の選手たちに還元したり、払ってくれた選手たちのライバルになってお返ししたい。支払われるなら割り切って受け取り、そのぶん強くなると考えた方が良いのかなと思います。払う側としても、申し訳なさそうに受け取られても困るでしょうから」

 ライバルとなり、切磋琢磨することでテニス界に貢献するという高橋の哲学には、この2年間もがき苦しみ、ようやく光明を見い出した中での思想の推移が反映される。

「世界のビッグ3やビッグ4を見ても、ライバルとの相乗効果で強くなり、それを見て他の選手も引き上げられている状況があると思います。もちろん僕も試合で負けたくないですが、全体のレベルが上がる中で他の選手よりも強くなってやると考えた方が、自分のためにもなりますから。
 
 そういう考え方をするようになったのは、この1~2年ですね。それが心のゆとりにつながってると思うし、逆に、心のゆとりが生まれるかもと思って、そういうふうに考えたところもあるし。そのような考え方を与えてくれたのは、同じ三菱電機所属の杉田(祐一)選手や、内山君なんです。2人は僕のことも気にかけて、練習にも誘ってくれる。上の選手が『みんなで強くなろう』と言ってくれることが大きいと思います」

 新型コロナウイルス禍によるツアーの停止は、テニス界が抱えていた問題を浮き彫りにし、同時に選手個々が自身を見つめ、社会や他者とのつながりを再構築する機会を生みもした。

 それら生まれた多様な視座や関係性が、この競技を一層豊かにする――そんな未来が、きっとある。

文●内田暁

【PHOTO】世界で戦う熱き日本人プレーヤーたち!
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号