そして、ATPファイナルズでは、マリーもジョコビッチも当然のように決勝へ進んだ。
「まるで映画のシナリオのようだ――」ジョコビッチは試合前にそう語ったという。

　結果、マリーがジョコビッチを6-3、6-4で破り、ATPファイナルズでの初タイトルと、年間最終ランキング１位を獲得した。「ビッグマッチ中のビッグマッチだった」というマリー。「自分たちは、数々の大舞台で対戦してきた。グランドスラム決勝全て、オリンピック、そして今回の１年を終えるための試合であるATPファイナルズ。自分にとっては非常に重要な勝利だった。世界1位を獲得して年を終える、一年を締めくくるまさに最大級の試合だ」と、対戦を振り返った。
  　２人はこれまで、互いに最大限の敬意を払って関係を続けてきた。マリーが言うには、コートの外ではランキングや試合についてはもちろん、テニスの話は全くしないそうだ。2016年のインタビューでは「いつか自分たちがプロ生活から離れたら変わるかもしれない。でも今は、お互いの家族、子どもたちのことなどが話題の中心だ。今年は、自分が初めて父親になったので、それについて長く話し込んだよ」と語っていた。

　世界No.１の座を賭けて戦った彼らは、たとえライバルでも素晴らしい友人となりえることを証明している。マリーは現在、股関節の手術からの復活途上にあるが、この2人の、心が奮い起ち、魂を揺さぶられるような対戦が、再び見られる日が来ることを心待ちにしている。

文●東真奈美

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