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国内テニス

“謀反を起こす肉体”との戦い…プロテニスプレーヤー河内一真を襲った"イップス"の恐怖【前編】

内田暁

2020.08.14

 河内の場合、イップスの起点となりえる不安やトラウマ的な経験もなかったというので、最初の原因は、この局所性ジストニアだったかもしれない。

 ただそれも、あくまで可能性の話である。そしてひとたび意識の世界に降りてきた時から、イップスは、身体と心の複雑なパズルへと様相を変えていく。右腕は彼の意志に背き、思うように動いてくれない。ただ、だましだましのサービスでも、コートに立てば彼は勝ち続けた。

 17歳の夏は彼にとって、結果だけ見れば、最も充実した日々だった。8月には全日本ジュニア18歳以下単複で優勝し、インターハイ団体戦も制する。ジュニア・デビスカップ(国別対抗戦)でも日の丸を背負い日本の優勝に貢献した河内は、誰もが認める、日本のトップジュニアだった。

 それら輝かしい戦績を引っさげてのプロ転向は、複数のスポンサーもつき、順当にして順調なスタートと人々の目には映ったはずだ。

 河内本人にしてみても、テニスを職業とすることに不安や迷いはなかったという。サービスの不調は確かに気になるが、それもいずれ治るものだと自分に言い聞かせた。

 ただ今になって思えば、周囲の期待やその具現化としてのスポンサーは、心身の歯車をさらに狂わす負荷になっていかもしれない。
 
「調子は悪かったけれど、スポンサーにはついてもらっている。結果を残さなくちゃというプレッシャーがあったのかもしれないです」。

 生来、生真面目な性格なのだろう。プレー面でも再現性が高く、「一度ショットが白帯に当たると、3本連続で当たる」というようなことも多々あったそうだ。自身に分析の目を向け、技に研鑽をかける「完璧主義者」的な側面が、彼を優れたテニスプレーヤーにしたのは間違いないだろう。

 ただそのような性向は、イップスを悪化させる要因になるとも言われている。
 
「今までと同じ動き方ができないのに、同じように動かそうとして、余計におかしくなりはじめた。僕は神経質な方なので、腕とかばかりに意識が行ったら余計にダメになって。身体がロックされるような感じで、動かしたくても動かない。サービスで言ったら、腕を上げていきたいのに、肩がロックされたみたいで、どうやっても動かないんです」。

 長い……あまりに長い“謀反を起こす肉体”との戦いは、このようにして始まった――。

※後編は8月15日、朝6:00に掲載予定です。

文●内田暁

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