しかし、両者自然とギアを上げた一進一退の攻防は、錦織が第４ゲームを40－15からダブルフォールト絡みで落としたことで決まってしまった。これも意外な光景だった。大音量の「ツォンガコール」がスタジアムの外からも鳴り響くなか、地元の雄は、強烈なサービスを連発し、短いポイントを量産。結局６－３でこのセットを奪ってベスト４進出を決めた。

　ツォンガの第５セットのスタッツを見ると、１stサービスの確率は一気に73％へ急上昇。アンフォーストエラーはわずか４本に急減。途中から５セットを見据えていたのだろうか、ツォンガが一気に引き上げた集中力が、錦織の出来を上回ってつかんだ勝利だった。
  　５つのセットのうち、どちらに転んでも不思議のない展開になったのは、この最後のセットのみ。悔やまれるのは、その競り合いの中で落とした第４ゲームだが、「最後はファースト（サービス）を全く取れなかった。そこは集中力を上げてきた彼の勝負強さ」と錦織は脱帽する。

　４回戦後には、「今までのいいテニスができていれば、優勝までチャンスはあると思う」と語っていただけに、“初の全仏ベスト８”も残念な結果ではある。だが、もっと広い視野で見れば、このクレーシーズンについた黒星は、マドリードでのマリー戦、ローマでのジョコビッチ戦と上位に喫したのみだった。

　そして、この全仏での４試合を含めた16試合をケガなく乗り切っている点も、大きな手応えとして残ったはず。これらはトップ５には不可欠であり、昨季までの錦織には欠けていた要素だ。

◆2015年準々決勝
錦織圭［1-6 4-6 6-4 6-3 3-6］ジョー-ウィルフリード・ツォンガ

構成●スマッシュ編集部

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