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国内テニス

なぜ自ら大会を作ったのか? 伊達公子が語る“世界目線”のジュニア育成ビジョン

内田暁

2020.12.15

伊達がゼネラル・プロデューサーを務めた愛媛の「リポビタン国際ジュニア」では、多くのジュニアが貴重な経験とポイントを手にした。写真は女子シングルスの表彰式。写真提供:ヨネックス株式会社

伊達がゼネラル・プロデューサーを務めた愛媛の「リポビタン国際ジュニア」では、多くのジュニアが貴重な経験とポイントを手にした。写真は女子シングルスの表彰式。写真提供:ヨネックス株式会社

 新型コロナウイルスの感染拡大により、国境を越えた移動が大きく規制される昨今では、日本国内の大会増加や環境拡充は、テニス人気の火を消さぬための必須条件であるだろう。

 それはジュニアだけでなく、ツアーレベルで戦うプロも同様だ。世界的に見ても、欧米で賞金大会やエキジビションイベントが複数開催され、日本でも「賞金大会やリーグ戦など、国内でもトッププロが参戦し、お金を稼げるシステムを作るべきだ」との声も一部では上がっている。

 ただそのような趨勢は、理念を失うと時代に逆行しかねないと、伊達は見る。

「何を目的にするかがクリアであれば、その(ドメスティックな大会を充実させる)考え方もありなのかなと思いますが……。私的な考えでいうと、環境がハードコートでもレッドクレーでもないなかでやっていくと、本来の目的がどこかを考えていかないと、本当の意味でのドメスティックに過ぎないものになってしまう。世界に向いている目線のレベルを、1つ下げてしまう側面もあると思うんです。

 このコロナ禍で、とにかく今は試合数をこなすことが目的だと割り切り、それを全員が認識しているのであれば、サーフェスを問わずやることもありかなとは思います。ですが完全にドメスティックになってしまうのは、私は違うかなと思います」
 
 あくまで目線は世界へ――。
 それこそが、彼女の中で変わらぬ哲学。同時に彼女が願うのは、テニスを含むスポーツの火そのものが、このコロナの時代で消えてしまわないことである。

「もちろん、こういう状況のなかで何が大切かと考えた時、スポーツが何より一番とはならないかもしれない。けれど見方を変えれば、今誰もがなかなか好きなことができず、目標を失いがちななかで、こういう時だからこそスポーツが存在し、観客もスポーツを見ることによってモチベーションを上げることにつながると思います。そうであってほしいと思うので、スポーツがなくなるのはできるだけ避けたいと思います」

 スポーツで人々に夢を与えるためにも、目指す先はより高い次元へ――。
 かつて自分が戦った世界に視線を定め、彼女はその舞台へと続く、順路を築いていく。

取材・文●内田暁

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