テニス・オーストラリアが手配したチャーター便に乗り、選手や関係者たちは複数の都市から、いずれも1月15日前後にメルボルンに集結した。入国後は、オーストラリア政府が定める2週間の隔離に入るが、選手たちは特例的に、練習のため1日5時間の外出が許されることになっていた。
とはいえ、外出スケジュールも厳格だ。選手が練習会場に連れていけるスタッフは、1人のみ。練習パートナーも事前に決めなくてはならず、その選手とは基本的に、2週間を通して行動を共にすることとなる。
また、練習スケジュールは全選手分を大会側がアレンジするため、当事者たちが予定を知るのは前日の夕方。練習開始時間は早ければ朝7時、遅い場合は夕方からとなる。さらには、外出可能な5時間には移動の時間も含まれ、その内訳も定められている。ホテルから会場までの移動時間が、往路復路それぞれ15分。コート練習は2時間、ジムでのトレーニングが1時間半で、食事が1時間だ。
会場に連れていけるスタッフが1人のため、選手によってはアスレティックトレーナーとルームをシェアし、部屋でマッサージや治療を受けている。土居美咲も、そのような対処をした1人。厳密にはルームシェアではなく、トレーナーが泊まる隣の部屋とは扉でつながっており、その2部屋間は行き来が許されるという。もっとも土居の場合は、ロサンゼルスから現地入りしたコーチのクリス・ザハルカが、搭乗していたチャーター便でコロナ陽性者が出たため、完全隔離で部屋から出られなくなってしまったのだが……。
厳格な防疫体制に加え、相次ぐ陽性者の発覚により2週間の完全隔離を強いられた選手が72人に至った今、選手からは不公平感を訴えたり、練習不足によるケガを懸念する声が上がっている。ただメルボルンは、昨年6月から徹底したロックダウンを実施し、ついには“市内感染者ゼロ”を実現した町である。その間に市民が払った犠牲を知るにつれ、選手間では大会開催そのものを感謝し、現状を受け入れようとする機運が広がっている。
日比野が初めて練習会場を訪れた時、何よりうれしく感じたのは、スタッフたちがマスク越しにもわかる笑顔で自分たちを迎え入れ、可能な限り快適に過ごせるよう努めてくれたことだという。
「ハッピースラム」とは、大会スタッフや観客、さらにはメルボルンの街全体から立ち上る幸福な空気感から、全豪オープンが得た愛称だ。厳しい状況下ながら、その愛称にふさわしい大会になることを、全ての関係者たちが願っている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全豪オープンでの日本人選手たちのプレー集
とはいえ、外出スケジュールも厳格だ。選手が練習会場に連れていけるスタッフは、1人のみ。練習パートナーも事前に決めなくてはならず、その選手とは基本的に、2週間を通して行動を共にすることとなる。
また、練習スケジュールは全選手分を大会側がアレンジするため、当事者たちが予定を知るのは前日の夕方。練習開始時間は早ければ朝7時、遅い場合は夕方からとなる。さらには、外出可能な5時間には移動の時間も含まれ、その内訳も定められている。ホテルから会場までの移動時間が、往路復路それぞれ15分。コート練習は2時間、ジムでのトレーニングが1時間半で、食事が1時間だ。
会場に連れていけるスタッフが1人のため、選手によってはアスレティックトレーナーとルームをシェアし、部屋でマッサージや治療を受けている。土居美咲も、そのような対処をした1人。厳密にはルームシェアではなく、トレーナーが泊まる隣の部屋とは扉でつながっており、その2部屋間は行き来が許されるという。もっとも土居の場合は、ロサンゼルスから現地入りしたコーチのクリス・ザハルカが、搭乗していたチャーター便でコロナ陽性者が出たため、完全隔離で部屋から出られなくなってしまったのだが……。
厳格な防疫体制に加え、相次ぐ陽性者の発覚により2週間の完全隔離を強いられた選手が72人に至った今、選手からは不公平感を訴えたり、練習不足によるケガを懸念する声が上がっている。ただメルボルンは、昨年6月から徹底したロックダウンを実施し、ついには“市内感染者ゼロ”を実現した町である。その間に市民が払った犠牲を知るにつれ、選手間では大会開催そのものを感謝し、現状を受け入れようとする機運が広がっている。
日比野が初めて練習会場を訪れた時、何よりうれしく感じたのは、スタッフたちがマスク越しにもわかる笑顔で自分たちを迎え入れ、可能な限り快適に過ごせるよう努めてくれたことだという。
「ハッピースラム」とは、大会スタッフや観客、さらにはメルボルンの街全体から立ち上る幸福な空気感から、全豪オープンが得た愛称だ。厳しい状況下ながら、その愛称にふさわしい大会になることを、全ての関係者たちが願っている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全豪オープンでの日本人選手たちのプレー集