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国内テニス

ノーランキングからの再挑戦。もうひとりの“94年組”澤柳璃子が現役復帰を決意した理由〈SMASH〉

内田暁

2021.03.16

19年の楽天オープンでは、ウイルソンのブースで普通に店員として働いていた澤柳(左)。様々な経験を経て、もう一度グランドスラムを目指す決心に至った。写真:左/内田暁、右/本人提供

19年の楽天オープンでは、ウイルソンのブースで普通に店員として働いていた澤柳(左)。様々な経験を経て、もう一度グランドスラムを目指す決心に至った。写真:左/内田暁、右/本人提供

 高校生や一般ユーザーと打つ時には、基本に立ち返り、ボールにきれいな回転をかけることを心掛ける。するとフォアハンドの感覚が、良くなっているように感じられた。

 コーチとして、選手に「プランAがうまくいかない時は、プランBに切り替えよう」「自分の得意なショットの調子が良くない時は、相手が嫌がるボールを打とう」と助言するうち、自分も時折試合をする時、その言葉を体現できるようになってくる。

 以前のように、「自分の打ちたいショット、得意なパターン」に拘泥することがなくなっていた。相手の弱点や心の動きも、よく見えている。

「今の自分のこの状態で、もう一度、ツアーに挑戦してみたら、どんな感じになるんだろう?」

 昨年の夏頃、心の浮かんだその思いは、日が経つにつれ膨らんでいく。自分の現在地を知るためにも、昨年末の日本リーグに出場し答えを出すつもりでいたが、その日本リーグが中止になった時にも、世界の舞台で自分を試したいとの渇望が消えることはなかった。

 再びツアーに戻ろう、もう一度グランドスラムの夢を追ってみよう――年が改まった頃には、心はすでに決まっていた。
 
「ツアーの大変さはわかっているつもりですし、そこに飛び込んで結果を出すのは、並大抵の覚悟ではできないと思っています」と彼女は言う。再びつらいことも待っているだろうが、だがその怖さよりも、「楽しみだしワクワクしている」気持ちが、今は上回っているとも言う。

「3年前よりも良い舞台で戦いたいという気持ちが、すごく強くて!」

 その願いの実現に向け、彼女は3月中旬に、エジプトへと旅立った。

 ランキングはない。まずは、最もグレードの低いITF大会(W15)の出場を目指すが、今はランキング上位の選手も試合を求め下部大会に出場するため、予選のリストにも入れていない。それでも彼女は、予選出場権を懸けたプレ予選に出るため、まずは現地入りをする。

「とりあえず大会会場に行って、雰囲気も久々に味わって、いろんなことも楽しめるように。いろんな選手と練習もできるだろうし、それでプレ予選に入れたらラッキーくらいの意気込みで、まずは乗り込んでやろうかなと!」

 ツアーを回っていた20歳前後の澤柳は、あまり笑顔を見せず、他者を寄せ付けない張り詰めた空気をまとっていた。だがそれも、実は「テニス選手とは、そうあるべき」と、どこか無理して被っていた仮面。

 今の、楽しそうに、何か仕掛けてやろうとイタズラっぽい笑みを浮かべてコートに立つ彼女には、「乗り込んでやろう!」という威勢の良い言葉が、よく似合う。

取材・文●内田暁

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