19歳のロレンツォ・ムゼッティに2回戦で敗れた西岡は、彼自身もズベレフやルブレフらとともに、「ネクスト・ジェン」と呼ばれた一人。リアルタイムで時代の過渡期に身を置く彼の皮膚感覚は、さらに生々しい。
「基本的にボールを打てないと勝てないですね。ぼくが18歳でグランドスラムに出始めた頃は、正直、試合展開だけで勝てた。パワーがなくても、頭を使ってうまく勝てた。
それが今は、全くできないです。何かしようとしても、一発で決められる。僕のベースになっているテニスがありますが、それではどうしようもないくらいボールを打たれる展開が多くて」
自分たちの世代が持ち込んだパワーテニスを「そういうテニスが当然だと思ってやっている」とした上で、さらに先に進めたのが、ムゼッティらの世代だと西岡は見る。
「彼らは、今のテニスをやっているのかなという感じです。若い選手……。オジェ‐アリアシムもシャポバロフやチチパス選手も、今日の相手もシナーも、みんなそうなんだと思います」
それが、かつての“新人類”である西岡の見解だ。
コーチとして普段は輿石亜佑美ら若手を指導し、今回のクレーシーズンでは弟・良仁に帯同した兄の靖雄は、この一年で、テニスの変化は加速したと感じたという。
「コロナ禍でツアーが中断していた間、若手がフィジカルを鍛えて一層パワーテニスに磨きが掛かった。10年ほど前から、今のようなパワーテニスをしていた選手は居たのですが、ミスも多かった。そこにラケットの性能向上とフィジカル強化が加わり、高い完成度でそのテニスを体現しているのが今の若手だと思います」
ここで言うフィジカルの向上には、身体の使い方も含まれるのだろう。本戦初戦でベレッティーニと対戦したダニエルは、「フォアハンドもあんなにテイクバックが短いのに、ほぼ手首だけでハエを叩くような打ち方をする。それでボールのスピード出せるのは、相当上半身の動きが速いから」だと分析した。
そのテニスに対抗すべく、ダニエルはパワー向上を標榜する。一方、170センチの西岡は、「僕がルブレフみたいにエースを取れるのかと言ったら、体格もあるので無理。今の自分のテニスをどうにか攻撃化して、現代のテニスに適応していくことが大切」だと言いきっている。
世代交代は単なる選手の年齢だけでなく、異なるテニスの波として押し寄せている。今回、世界の最前線で戦う日本の選手たちはみな、ある種の危機感とともにその実感を口にした。それら貴重な体験と声を、いかに今後に反映していくか? 日本のテニス界としても、変革が求められる時かもしれない。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】大坂、錦織、西岡など世界で戦う日本人選手の厳選フォトギャラリー!
「基本的にボールを打てないと勝てないですね。ぼくが18歳でグランドスラムに出始めた頃は、正直、試合展開だけで勝てた。パワーがなくても、頭を使ってうまく勝てた。
それが今は、全くできないです。何かしようとしても、一発で決められる。僕のベースになっているテニスがありますが、それではどうしようもないくらいボールを打たれる展開が多くて」
自分たちの世代が持ち込んだパワーテニスを「そういうテニスが当然だと思ってやっている」とした上で、さらに先に進めたのが、ムゼッティらの世代だと西岡は見る。
「彼らは、今のテニスをやっているのかなという感じです。若い選手……。オジェ‐アリアシムもシャポバロフやチチパス選手も、今日の相手もシナーも、みんなそうなんだと思います」
それが、かつての“新人類”である西岡の見解だ。
コーチとして普段は輿石亜佑美ら若手を指導し、今回のクレーシーズンでは弟・良仁に帯同した兄の靖雄は、この一年で、テニスの変化は加速したと感じたという。
「コロナ禍でツアーが中断していた間、若手がフィジカルを鍛えて一層パワーテニスに磨きが掛かった。10年ほど前から、今のようなパワーテニスをしていた選手は居たのですが、ミスも多かった。そこにラケットの性能向上とフィジカル強化が加わり、高い完成度でそのテニスを体現しているのが今の若手だと思います」
ここで言うフィジカルの向上には、身体の使い方も含まれるのだろう。本戦初戦でベレッティーニと対戦したダニエルは、「フォアハンドもあんなにテイクバックが短いのに、ほぼ手首だけでハエを叩くような打ち方をする。それでボールのスピード出せるのは、相当上半身の動きが速いから」だと分析した。
そのテニスに対抗すべく、ダニエルはパワー向上を標榜する。一方、170センチの西岡は、「僕がルブレフみたいにエースを取れるのかと言ったら、体格もあるので無理。今の自分のテニスをどうにか攻撃化して、現代のテニスに適応していくことが大切」だと言いきっている。
世代交代は単なる選手の年齢だけでなく、異なるテニスの波として押し寄せている。今回、世界の最前線で戦う日本の選手たちはみな、ある種の危機感とともにその実感を口にした。それら貴重な体験と声を、いかに今後に反映していくか? 日本のテニス界としても、変革が求められる時かもしれない。
現地取材・文●内田暁
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