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海外テニス

大ケガを克服して再びグランドスラム決勝に! “色彩豊かな伝道師”マテック-サンズとは<SMASH>

内田暁

2021.06.23

若手注目株のシフィオンテク(右)と組んだ今年の全仏は優勝こそ逃したが、2017年以来となる決勝進出を果たした(C)Getty Images

若手注目株のシフィオンテク(右)と組んだ今年の全仏は優勝こそ逃したが、2017年以来となる決勝進出を果たした(C)Getty Images

 それから、4年——。

 イガ・シフィオンテクと組み、2021年の全仏オープンで再びグランドスラム決勝の舞台に戻ってきたマテック-サンズは、「私はまだまだ元気なうえに、イガから若さも吸い取ってるわ!」と豪快に笑った。

 ネット際の俊敏な動きは、ケガの影響や再発への恐れを微塵も感じさせない。

 ポイントを決めるたびに拳を振り上げ、パートナーの好プレーを飛び跳ね称賛する姿は、ダブルスという競技のチームプレーとしての魅力を体現していた。

 会見では手振りを交えて饒舌に話し、「私ばっかり話してるわね、次からはイガに譲るわ」と苦笑いを浮かべる。そんな彼女に、どうしても尋ねたいことがあり、「ごめんなさい、ベサニーへの質問なのだけれど」と断わり、切り出した。

「4年前に大怪我を負った時、復帰は無理だという疑いが、頭をよぎりはしなかったか?」と。

 拗ねたふりして去ろうとするシフィオンテクを、「残ってよ!」と軽くいさめて、彼女は口を開いた。
 
「正直に言うなら、あのケガから今日に至るまで、ありとあらゆる感情を経験してきたわ。疑念を抱かなかったかって? もちろん、自分を疑った。あらゆる疑念が巡った。ダブルスでまた決勝に戻れるか? シングルスでも戦えるか? また以前のように動けるの? そんな思いがね。その過程で、私は自身のことをたくさん知った。最も難しかったのは、かつての自分と比べて今の自分に期待してしまうことだった。

 今は、以前の功績をやり過ごすことができている。今の私は、以前とは違う人物、異なるプレーヤーだととらえている。怪我の前と比べることなく、今を楽しみたいと思っている。36歳の今、フィジカル面ではキャリアの中で一番良いと感じているくらい。必死にトレーニングしているし、賢くプレーできている。栄養学やトレーニングについても学んで、リカバリーも順調なの」

 プロ転向から22年経った今、彼女は「毎年、自分のことがわかるようになったの」と笑みを浮かべる。

 奇抜なファッションで苦悩や努力を覆い隠し、コート内外の動向で、競技の魅力を伝える伝道師的な役目も果たす。

 ツアー内で異彩を放ちながら、その実、アスリートの王道を進む——36歳のかぶき者は、文字通り色彩豊かなテニスプレーヤーだ。

取材・文●内田暁

【PHOTO】マテック-サンズがペアを組んだシフィオンテクの2020全仏プレー!
 
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