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国内テニス

【伊達公子】日本ではありえない、フランス政府の決断と迅速な行動に感心<SMASH>

伊達公子

2021.06.18

ジョコビッチ対ナダルの試合を最後まで会場で見られる決断を下した政府を賞賛する伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

ジョコビッチ対ナダルの試合を最後まで会場で見られる決断を下した政府を賞賛する伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 先週、全仏オープンが終わりました。この大会で驚いたのが、準決勝のジョコビッチ対ナダル戦で、会場にいた観客が試合を最後まで見られるように、フランス政府と大会運営が動いたことです。

 フランスは新型コロナウイルス感染防止のため、夜11時以降の外出を禁止している状況でした。それが、熱戦の準決勝が11時を過ぎることがほぼ確定した時に、会場に最後まで観戦できるというアナウンスが流れました。

 なんて素晴らしい計らいでしょうか。スポーツをスポーツだけとして捉えていない。フランスではスポーツが文化として根付いていると感じます。

 この決断の内容に加えて、臨機応変に予定になかった事を決め、スピードを持って実行できることにも感心しました。

 2日前に行なわれた準々決勝のジョコビッチ対ベレッティーニ戦も夜11時を過ぎる熱戦でしたが、この試合では観客が試合途中での退席を余儀なくされていました。フランスの観客はテニスがわかっているだけに、あの時点で帰れというのは酷だし、「何のために来たと思っているの?」という状況です。それが2日後には11時以降の観戦もOKになったわけです。
 
 今回の決断を引き出させたのは、選手たちの存在ももちろんあったと思います。でも、ジョコビッチもナダルもフランス人ではありません。決断する政府(政治家)がスポーツに造詣が深いからこそ、臨機応変な対応が可能なのでしょう。

 政府がどこまで準備をしていて、どの段階から可能性を探っていたかはわかりません。でも、短時間で大きな決断をしたのは確かです。つまり、政府と運営側が連絡を取り合える状況にあるわけです。政府とスポーツの近さが感じられます。日本ではちょっと考えにくいですね。予定にないものは、議題にすら上げたくないでしょうから。

 この時、街中の人たちも11時過ぎまで外出できたのかはわかりません。ただ、日本ではこの件について、理解を示してもらえないケースのほうが多い気がします。テニス観戦をしている人だけなぜ優遇されるのかとか、コロナ禍でテニスを見ている場合ではないだろうとか。

 こういう状況が、日本社会のブレーキになっているように思います。「何かやるのに色々と言われるのなら、やらない方がいい」といった雰囲気が、全てにおいて強まってきているのではないかと感じます。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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