先週、全仏オープンが終わりました。この大会で驚いたのが、準決勝のジョコビッチ対ナダル戦で、会場にいた観客が試合を最後まで見られるように、フランス政府と大会運営が動いたことです。
フランスは新型コロナウイルス感染防止のため、夜11時以降の外出を禁止している状況でした。それが、熱戦の準決勝が11時を過ぎることがほぼ確定した時に、会場に最後まで観戦できるというアナウンスが流れました。
なんて素晴らしい計らいでしょうか。スポーツをスポーツだけとして捉えていない。フランスではスポーツが文化として根付いていると感じます。
この決断の内容に加えて、臨機応変に予定になかった事を決め、スピードを持って実行できることにも感心しました。
2日前に行なわれた準々決勝のジョコビッチ対ベレッティーニ戦も夜11時を過ぎる熱戦でしたが、この試合では観客が試合途中での退席を余儀なくされていました。フランスの観客はテニスがわかっているだけに、あの時点で帰れというのは酷だし、「何のために来たと思っているの?」という状況です。それが2日後には11時以降の観戦もOKになったわけです。
今回の決断を引き出させたのは、選手たちの存在ももちろんあったと思います。でも、ジョコビッチもナダルもフランス人ではありません。決断する政府(政治家)がスポーツに造詣が深いからこそ、臨機応変な対応が可能なのでしょう。
政府がどこまで準備をしていて、どの段階から可能性を探っていたかはわかりません。でも、短時間で大きな決断をしたのは確かです。つまり、政府と運営側が連絡を取り合える状況にあるわけです。政府とスポーツの近さが感じられます。日本ではちょっと考えにくいですね。予定にないものは、議題にすら上げたくないでしょうから。
この時、街中の人たちも11時過ぎまで外出できたのかはわかりません。ただ、日本ではこの件について、理解を示してもらえないケースのほうが多い気がします。テニス観戦をしている人だけなぜ優遇されるのかとか、コロナ禍でテニスを見ている場合ではないだろうとか。
こういう状況が、日本社会のブレーキになっているように思います。「何かやるのに色々と言われるのなら、やらない方がいい」といった雰囲気が、全てにおいて強まってきているのではないかと感じます。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
【PHOTO】世界4位にまで上り詰めた伊達公子のキャリアを写真で振り返り!
フランスは新型コロナウイルス感染防止のため、夜11時以降の外出を禁止している状況でした。それが、熱戦の準決勝が11時を過ぎることがほぼ確定した時に、会場に最後まで観戦できるというアナウンスが流れました。
なんて素晴らしい計らいでしょうか。スポーツをスポーツだけとして捉えていない。フランスではスポーツが文化として根付いていると感じます。
この決断の内容に加えて、臨機応変に予定になかった事を決め、スピードを持って実行できることにも感心しました。
2日前に行なわれた準々決勝のジョコビッチ対ベレッティーニ戦も夜11時を過ぎる熱戦でしたが、この試合では観客が試合途中での退席を余儀なくされていました。フランスの観客はテニスがわかっているだけに、あの時点で帰れというのは酷だし、「何のために来たと思っているの?」という状況です。それが2日後には11時以降の観戦もOKになったわけです。
今回の決断を引き出させたのは、選手たちの存在ももちろんあったと思います。でも、ジョコビッチもナダルもフランス人ではありません。決断する政府(政治家)がスポーツに造詣が深いからこそ、臨機応変な対応が可能なのでしょう。
政府がどこまで準備をしていて、どの段階から可能性を探っていたかはわかりません。でも、短時間で大きな決断をしたのは確かです。つまり、政府と運営側が連絡を取り合える状況にあるわけです。政府とスポーツの近さが感じられます。日本ではちょっと考えにくいですね。予定にないものは、議題にすら上げたくないでしょうから。
この時、街中の人たちも11時過ぎまで外出できたのかはわかりません。ただ、日本ではこの件について、理解を示してもらえないケースのほうが多い気がします。テニス観戦をしている人だけなぜ優遇されるのかとか、コロナ禍でテニスを見ている場合ではないだろうとか。
こういう状況が、日本社会のブレーキになっているように思います。「何かやるのに色々と言われるのなら、やらない方がいい」といった雰囲気が、全てにおいて強まってきているのではないかと感じます。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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