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海外テニス

「東京に行くか、行かないか…」世界のプロテニス選手が考える“オリンピック出場の価値”とは…<SMASH>

内田暁

2021.07.04

単複含め過去3大会で4つの金メダルを手にしているセレナ・ウィリアムズは「理想的な状況でない」と出場を辞退した。(C)Getty Images

単複含め過去3大会で4つの金メダルを手にしているセレナ・ウィリアムズは「理想的な状況でない」と出場を辞退した。(C)Getty Images

 ラファエル・ナダルは全仏終了からほどなくして、体調が万全でないことを理由に、ウインブルドンとオリンピックの辞退を表明。ドミニク・ティームは、手首の怪我のためウインブルドンの欠場を強いられたが、それより前の時点でオリンピック欠場は決めていた。

 アメリカやカナダの北米勢は、辞退の流れがより顕著。男子アメリカ代表では、世界52位で国内5番手のトミー・ポールが最高位。今季ランキングを駆けあがりアメリカ4番手につけたセバスチャン・コルダは、出場圏内に到りながら、東京には進路を取らぬ一人だ。

「全チームスタッフやエージェントとも話し合った結果、全米オープンに向けて北米に滞在し、多くの前哨戦に出ることが自分にとってベストだと判断した」

 欠場の理由をそう語るコルダだが、プロゴルファーとして活躍するネリーとジェシカの2人の姉は、オリンピック出場を決めている。

「姉たちは、子どもの頃からの夢が叶ったと大喜びしているんだ。僕もすごくうれしいよ」

 コルダ家(父親は元世界2位のテニス選手)の末っ子は、いずれは自分も姉たちの夢に続きたいと言った。
 
 女子の方でもアメリカは、国内ナンバー1のソフィア・ケニンと2番手のセリーナ・ウィリアムズが欠場する。ケニンは「家族を誰もつれていけないのは、無理」と、海外からの入場制限が最大のネックだったと明かす。

 セリーナも「私の名前が、出場者リストに入っていないことに気付いた。ということは、私は行けないということ」と、禅問答的な論理展開で欠場表明。この時点での明言は避けたが、それ以前から、家族とともに過ごせないなら行かないことを示唆していた。

 一方で、オリンピック出場に興奮を隠さぬココ・ガウフは「私の場合、幸運にもまだ17歳なので、父が一緒に来られるみたい」と、他選手が抱える悩みはクリアしている模様。

「陸上選手だった母は、オリンピックを夢見ながら出場がかなわなかった。母のためにも出たい」と、家族のサポートを得て家族の夢をつかみに行く。

 テニスがオリンピックの正式競技に復活したのは、1988年のソウル大会。以降、ポイントシステムやテニス界での重要性はその時々で変化したが、多くのテニス選手にとって、他競技選手との交流も含めたい“祭典”であったのは確かだろう。

 コロナ禍によりその要素が大きく削がれた今、東京大会はいかなる意義を発信できるか? テニス界におけるオリンピックの価値を規定する、一つのターニングポイントになるかもしれない。

取材・文●内田暁

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