対戦相手のマリー・ボウズコワ(チェコ)は、突出した武器こそないが、心技体のバランスが取れた若き戦略家。配球の妙で攻め込まれるリスクを減らし、大坂のパワーに確率テニスで対抗した。
試合の手綱は常に自身の手中にある展開は、大坂が有する「完璧主義者」の、あやうい側面を表層化しかねない。事実、第1セットの序盤では、誘うような相手の浅いボールを強打しては、ボールがラインを割る場面が散見された。
客席から響く自分の名を呼ぶ声が、「ファンを楽しませなくては」との意識を増大させもする。鮮やかなウイナーもあれば重要な局面でのミスも飛び出す、どこかぎこちない舵取り。
ただそのなかで大坂の進路に一本の軸を通したのが、危機の時ほどバリエーションと精度を増した、サービスだ。
「しっかりサービスゲームをキープしよう。そうすればどこかで、彼女はナーバスになってくれるかもしれない」
自分に言い聞かせたその言葉は、第1セットの終盤で現実となる。大坂が2連続エースでキープし迎えた第10ゲームで、それまで淡々とプレーを続けていたボウズコワの手元に狂いが生じた。2度目のブレークチャンスをものにした大坂が、苦しみつつも第1セットを奪取。この時、それまで辛うじて保っていた試合の均衡状態が、ぐらりと大きく崩壊した。
その潮目を逃さず、第2セットは序盤から大坂が畳みかけた。最初のリターンゲームをブレークし、続くサービスゲームを8分かけてキープした時、実質的な勝敗は決する。
「完璧なプレーではないが、それでも2セットで勝てたら素晴らしいこと。仮に3セットまで行ったとしても、この試合から多くを学んで次に生かすことができる」
第2セットでの大坂は、自分にそう語りかけ、完璧ではない自分を称賛した。
試合を通じファーストサービスの確率は47%と低かったが、8回瀕したブレークの危機は、結果的に全てしのいだ。エラーは23本と相手の8本を大きく上回ってしまったが、ウイナーも34を記録している。数字的には、改善できる点は多い。
だからこそ6-4、6-1のスコアで勝ったこの試合は、その非完全性ゆえに、完璧な始まりだ。
取材・文●内田暁
【PHOTO】大坂なおみの2020全米オープン制覇を厳選写真で振り返る
試合の手綱は常に自身の手中にある展開は、大坂が有する「完璧主義者」の、あやうい側面を表層化しかねない。事実、第1セットの序盤では、誘うような相手の浅いボールを強打しては、ボールがラインを割る場面が散見された。
客席から響く自分の名を呼ぶ声が、「ファンを楽しませなくては」との意識を増大させもする。鮮やかなウイナーもあれば重要な局面でのミスも飛び出す、どこかぎこちない舵取り。
ただそのなかで大坂の進路に一本の軸を通したのが、危機の時ほどバリエーションと精度を増した、サービスだ。
「しっかりサービスゲームをキープしよう。そうすればどこかで、彼女はナーバスになってくれるかもしれない」
自分に言い聞かせたその言葉は、第1セットの終盤で現実となる。大坂が2連続エースでキープし迎えた第10ゲームで、それまで淡々とプレーを続けていたボウズコワの手元に狂いが生じた。2度目のブレークチャンスをものにした大坂が、苦しみつつも第1セットを奪取。この時、それまで辛うじて保っていた試合の均衡状態が、ぐらりと大きく崩壊した。
その潮目を逃さず、第2セットは序盤から大坂が畳みかけた。最初のリターンゲームをブレークし、続くサービスゲームを8分かけてキープした時、実質的な勝敗は決する。
「完璧なプレーではないが、それでも2セットで勝てたら素晴らしいこと。仮に3セットまで行ったとしても、この試合から多くを学んで次に生かすことができる」
第2セットでの大坂は、自分にそう語りかけ、完璧ではない自分を称賛した。
試合を通じファーストサービスの確率は47%と低かったが、8回瀕したブレークの危機は、結果的に全てしのいだ。エラーは23本と相手の8本を大きく上回ってしまったが、ウイナーも34を記録している。数字的には、改善できる点は多い。
だからこそ6-4、6-1のスコアで勝ったこの試合は、その非完全性ゆえに、完璧な始まりだ。
取材・文●内田暁
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