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海外テニス

錦織圭と、その背中を追うマクドナルド――共にケガを乗り越えて迎える3度目の邂逅で見えてくるものは?<SMASH>

内田暁

2021.09.02

8月のシティ・オープンではフルセットでマクドナルド(右)が錦織(左)に勝利した。錦織は「このサーフェスが好きそうな選手」と警戒する。(C)Getty Images

8月のシティ・オープンではフルセットでマクドナルド(右)が錦織(左)に勝利した。錦織は「このサーフェスが好きそうな選手」と警戒する。(C)Getty Images

 再びマクドナルドを迎え打つ錦織には、初対戦時の記憶がまだ強く残っていただろうか。だが、ケガからの復帰のプロセスも含む3年半の年月は、若手が成長するのに十分な時間だ。

 ヒジのケガから復帰後の錦織が、サーブ&ボレーの名手をコーチにつけ、ネットプレーを多用する攻撃テニスを標榜していることは、日本のテニスファンの間では広く知られているだろう。その錦織に少年時代から憧れ、似たプレースタイルを構築し、そして同時期にケガによる長期離脱を余儀なくされたマクドナルドもまた、錦織同様に攻撃テニスに磨きをかけていた。

 2度目の対戦でのマクドナルドは、フォアの逆クロスで錦織を押し下げると、迷わずネットに出てボレーを沈めた。あるいは、バックのクロスの打ち合いから、錦織のお株を奪うようにダウンザラインに仕掛けるウイナーを奪いもした。

 ネットを挟み、まるで写し鏡のように似たプレーを展開する両者のつばぜり合いは、ファイナルセットの第12ゲームで、錦織がブレークを許し終焉を迎える。肩に痛みを覚えていた錦織が、サービスキープで相手以上に苦しんだのは間違いない。

 ただそれでも、試合後の錦織の口をついたのは、「思っていたよりむちゃくちゃ良かった」と相手を称える言葉だ。

「想定外だったのは、攻撃的なテニスを最初から仕掛けられ、自分が下がり気味になったこと。ファイナルセットも、彼のレベルが全く落ちなかった。どちらかというと、自分が悪いというより、彼が良かったのかな」

 それが2度目の対戦を終えた、“憧れられる側”の率直な思いだった。
 
 それからわずか、3週間後。3度目の対戦の機会は、今回の全米オープン2回戦で巡ってくる。

 錦織は、初戦で113位のサルバトーレ・カルーゾを6-1、6-1、5-7、6-3で退けての、2回戦進出。完璧に近い第1~2セットの後、開き直った感のある相手に押されて第3セットを失うも、第4セットでは勝負どころでの強さを発揮して突き放した。

 気になる肩の状態は万全ではないようだが、本人は「今のところは問題ないです」と語るにとどめる。テニスの状態的には、「オリンピックやワシントンDC(シティ・オープン)の方が若干良かった気がする」とは言うが、日々の環境や状況に応じて調子が変化していくのは、本人が誰より重々承知していることだろう。

 マクドナルドに関しては、「このサーフェスが好きそうな選手。ソツなく両サイドでミスなく打てるし、フラット系のショットが伸びてくる」と分析する。

 自身の背を追う後進相手に、追われる側は、いかなるプレーを披露するのか? 新たな成長過程にいる錦織にとっても、3度目のマクドナルド戦は、一つの試金石となる。

取材・文●内田暁

【PHOTO】全米オープン2021で躍進する錦織圭!
 

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