自己最高175位の清水綾乃は、本藤の同期にして高崎テニスクラブの仲間。ジュニア時代から頭角を現した清水は、本藤にとって「レベち(レベルが違う)」の存在だった。
それでも本藤は、「勝手に、綾乃を自分のライバルだと決めていた」と声をあげて笑う。
「綾乃が居なかったら、とっくにテニスは辞めていた」とまで執着するその存在に勝利したのは、プロ転向3年目。
テニスを続ける理由の一つは、この時に証明した。「高校時代の実績はなくても、世界の500位まで行けるというモデルケースにもなった」と松田も言う。
周囲は22歳の決断に、「早すぎる」と声をそろえる。ただ本藤は「まったく未練はないです」と、「ま」の音に力を込めた。
負けたら終わりの全日本に挑む本藤に、緊張や特別な感慨はなかったという。
対戦相手が、歳の近いリュー・理沙マリーであることも、晴れやかさを演出した一因だろう。
手首の状態が万全ではなかったことが唯一の心残りではあるが、コート上で「すべて出し切った」。
敗戦の瞬間、胸を占めた想いは何にも増して、「楽しかった!」という幸福感。
「今日の試合だけでなく、これまでのテニスキャリア、十分楽しんだなって」
こぼれた涙の成分は、嬉しさ半分、そして、これまで関わってきた人々の想いの反映が半分。その後者の成分には、「私との試合が最後だなんて…」と流すリューの涙も含まれていた。
引退後のプランは、現在は白紙だという。
型にハマらず、後ろは振り返らない。
プレー同様に、歯切れ良い清々しい幕引きだった。
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全日本選手権ファイナルを厳選写真で振り返り!
それでも本藤は、「勝手に、綾乃を自分のライバルだと決めていた」と声をあげて笑う。
「綾乃が居なかったら、とっくにテニスは辞めていた」とまで執着するその存在に勝利したのは、プロ転向3年目。
テニスを続ける理由の一つは、この時に証明した。「高校時代の実績はなくても、世界の500位まで行けるというモデルケースにもなった」と松田も言う。
周囲は22歳の決断に、「早すぎる」と声をそろえる。ただ本藤は「まったく未練はないです」と、「ま」の音に力を込めた。
負けたら終わりの全日本に挑む本藤に、緊張や特別な感慨はなかったという。
対戦相手が、歳の近いリュー・理沙マリーであることも、晴れやかさを演出した一因だろう。
手首の状態が万全ではなかったことが唯一の心残りではあるが、コート上で「すべて出し切った」。
敗戦の瞬間、胸を占めた想いは何にも増して、「楽しかった!」という幸福感。
「今日の試合だけでなく、これまでのテニスキャリア、十分楽しんだなって」
こぼれた涙の成分は、嬉しさ半分、そして、これまで関わってきた人々の想いの反映が半分。その後者の成分には、「私との試合が最後だなんて…」と流すリューの涙も含まれていた。
引退後のプランは、現在は白紙だという。
型にハマらず、後ろは振り返らない。
プレー同様に、歯切れ良い清々しい幕引きだった。
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全日本選手権ファイナルを厳選写真で振り返り!