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海外テニス

テニス界に女王ウィリアムズ姉妹を送り出した熱血パパ『キング・リチャード』の超型破りな子育て術<SMASH>

内田暁

2022.03.14

幼い子どもたちを金儲けの道具にさせたくないと考えたリチャードは、練習は続けるも2人をジュニア大会に出場させなかった。(C)Getty Images

幼い子どもたちを金儲けの道具にさせたくないと考えたリチャードは、練習は続けるも2人をジュニア大会に出場させなかった。(C)Getty Images

 いずれにしても、リチャードは家族を連れてコンプトンへと引っ越し、パブリックコートで二人の娘の特訓を始めた。テニス経験が無いに等しいリチャードにとって、コーチはテニス雑誌や著名コーチのレッスンビデオ。同時に彼は、独自の練習方法を編み出すアイディアマンでもあったようだ。

 例えばサービスの練習では、リチャードは使い古したラケットを集め、これをベースラインからフェンスめがけて投げさせたという。後に、セレナのコーチとなるパトリック・ムラトグルは、「これは理にかなった素晴らしい手法だ」と、“リチャード式サーブ練習”を絶賛している。

“ホームスクール”方式を取って家で勉強を教え、娘のテニス指導に明け暮れるリチャードの姿は、近所でも奇異な目で見られていたという。

 その向けられた冷ややかな視線は、テニスの世界でも同様だっただろう。多くの才能ある子どもたちが、ジュニア大会に出場し結果とともに未来のスポンサーを獲得していくなかで、リチャードは、ジュニア大会には娘を出させぬ方針を貫いた。
 
「まだ幼い子どもを、大人たちの金儲けの道具にされたくない。早期から注目を集め、重圧に潰されたくない」というのが、彼の主張。

 その一方で、テニス界の有力者やマスメディアには、「うちの娘たちは、女子テニス界のマイケル・ジョーダンだ」と吹聴して回ったという。そこで、著名テニスクラブやメディアがウィリアムズ家に近づくと、彼は激昂し追い返すことも珍しくなかった。

 そのようなリチャードの性向を示す、有名な動画がある。アメリカの大手テレビ局が、14歳のビーナスのインタビューをした時のこと。

「私はトップになれると信じている。多くのトップ選手にも勝てると信じている」

 そう愛らしく語るビーナスに、インタビューアーが、「どうして、そこまで信じられるの?」と尋ねた。するとリチャードはインタビューに割って入り、怒気をはらんだ声でインタビューアーを叱責する。

「彼女は自信があると言ってるだろう? なんで水をぶっかけるようなことばかり聞くんだ? ほっといてやれ!」……と。
 
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