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海外テニス

テニス界に女王ウィリアムズ姉妹を送り出した熱血パパ『キング・リチャード』の超型破りな子育て術<SMASH>

内田暁

2022.03.14

2001年のインディアンウェルズ決勝(写真)で理不尽ともいえる仕打ちを跳ね除けたセレナは、試合後に父と姉のいるスタンドへと駆け寄った。(C)Getty Images

2001年のインディアンウェルズ決勝(写真)で理不尽ともいえる仕打ちを跳ね除けたセレナは、試合後に父と姉のいるスタンドへと駆け寄った。(C)Getty Images

 かくのごとく、ことあるごとに娘との間に割って入るリチャードは、二人の原石に近づこうとする人々にとっては、大きな障壁だったようだ。

 ただリチャードにしてみれば、白人本位のテニスビジネスやメディアの世界から、娘を守ることに必死だったのだろう。

 そのように、リチャードが常に心のどこかに抱えていた外界への不信感や敵愾心が、不幸な形で表層化した出来事がある。

 カリフォルニア州インディアンウェルズで開催される大会で、それは起きた。

 インディアンウェルズは、コンプトンから車で2時間ほど離れた砂漠に広がる、のどかなリゾート地。大会会場に足を運ぶ観客には、夏をカナダ、冬をこの地で過ごす“渡り鳥”と呼ばれる富裕層も多い。

 2001年、二人はそろって同大会のベスト4に勝ち上がり、準決勝で対戦するはずだった。だが試合開始直前に、ビーナスはケガを理由に棄権を表明。この決断を、観客は「リチャードが仕組んだ出来レース」と捉えた。
 
 翌日……リチャードとビーナスがファミリーボックスに現れると、観客は一斉にブーイングを発する。さらには決勝のコートに立つセレナにまで、容赦なくブーイングを浴びせ続けたのだ。

 敵意に四方を囲まれ、それでもコート上では自分を律し勝利したセレナは、試合後、リチャードの胸に顔をうずめて泣きじゃくる。

「とんでもない人種差別だ!」と激昂したリチャードは、以降14年間、娘たちをインディアンウェルズの大会に出場させなかった。

 この出来事から、数年後——。

 件の試合を動画で見て、「こんなにブーイングされながらも勝つなんて、すごい! わたしも、この人みたいになりたい」と、セレナにまっすぐに憧憬の目を向けた少女がいた。

 この時、少女は知っていただろうか? セレナとビーナスこそが、彼女がテニスをする理由なのだと。

「わたしの父は、ビーナスとセレナの父親の本を読んで感激し、わたしと姉にもテニスをさせようと思ったの。だからあの二人が居なかったら、わたしは間違いなく、ここには居ないわ」
 
 自らもツアーを転戦するトッププロとなったとき、大坂なおみは、そう言った。

文●内田暁

【PHOTO】「全力を尽くす」ことをテーマに掲げて挑んだ大坂なおみの全豪OP厳選ショット!
 
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