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国内テニス

「結果が出ない」心の揺れと向き合った苦しい1年を乗り越え、果たした綿貫陽介のチャレンジャー初優勝

内田暁

2019.11.11

初優勝を果たし目指すところは「純粋に勝負を楽しめる選手であること」と言う綿貫。写真:兵庫県テニス協会/兵庫ノアチャレンジャー

初優勝を果たし目指すところは「純粋に勝負を楽しめる選手であること」と言う綿貫。写真:兵庫県テニス協会/兵庫ノアチャレンジャー

 そんな期待と不安を抱えながら迎えた今大会では、勝利を得るたびに自信を獲得する。
 
 決勝戦でも、杉田の猛攻を粘り強く耐えつつ、機を見てはコート後方からでもフォアの強打でウイナーを奪った。攻守の均衡を巧みに制御しつつ、第1セットは2つのブレークを奪い6-2。第2セットも第1ゲームのブレークを守り、5-4とリードし優勝へのサービスゲームを迎えていた。
 
 だが最後のこのゲームで、綿貫はまるで優勝への想いを試されるかのように、幾度も勝機を阻まれる。40-0からの3連続マッチポイントを挽回されると、ミスなく早いリズムで攻めたてる杉田相手に守勢に立たされる場面も増えた。だがブレークされそうになるたびに、綿貫はリスクを負った攻めに転じ、ポイントを奪っては咆哮をあげる。
 
 繰り返したデュースは9度。凌いだブレークポイントは3本。ここまでワンサイドで進んだ試合は、最終ゲームだけで15分を要する。その時間こそが、綿貫がプロ転向以降、「優勝しなくてはいけない、優勝できる、優勝したい」と、その時々で色を変えて彼に迫った、チャレンジャー初優勝への想いと道のりを映していた。
 
 そうして迎えた、9本目のマッチポイント――。

 杉田のショットがラインを割った時、綿貫は拳を振り上げることも声を出すこともなく、ただ目を固く閉じて天を仰ぐのみだった。
 
 この優勝により、ランキングは226位まで大きく最浮上。来年の全豪オープン予選が見えるところまで帰ってきた。
 
 ただ、今の彼は、数字にとらわれることはしたくないと言う。
「トーナメントを勝ちきれたのは、僕の中で大きな自信になった。今後は、もっと自信を持って勝負をするところはして、それでランキングが落ちたらしょうがない」

「良い経験」となった苦しみのシーズンを最高の形で終えた彼は、来季に向けて、断言する。
「純粋に勝負を楽しめる選手でありたいというのが、来年の目標です」
 
取材・文●内田暁

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