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海外テニス

ツアー最高峰の舞台で選手の練習相手を務める日本人留学生。人と人との縁が紡いだ数奇な体験<SMASH>

内田暁

2022.03.20

ツアーコーチの西岡靖雄氏(右)が高校の先輩である縁で、西岡良仁(左)ともボールを打ち合うことができた。将来の選択を左右する大きな経験だ。写真:西岡靖雄氏提供

ツアーコーチの西岡靖雄氏(右)が高校の先輩である縁で、西岡良仁(左)ともボールを打ち合うことができた。将来の選択を左右する大きな経験だ。写真:西岡靖雄氏提供

 加えて、海外で仕事をすることが多い親の姿も、石川さんの目をアメリカに向かせた。

「親が昔、仕事でアメリカに行っていたので、仕事で英語を使うのを小さい頃から見ていていいなと思ってました。そこで高校2年生の時、単身、2週間アメリカのサンディエゴに行って、語学学校に行きつつテニスをしたんです。その時の環境を見て、こんな所でテニスやりたいと思いました。それもあり、進路については悩んで悩んで、3年生になる直前に、やっぱりアメリカに行こうと思いました」

 だが、石川さんがアメリカ留学を決意した直後、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の様相が劇的に変わる。高校3年生時には、大きな目標としていた全国選抜高校も含め、インターハイや国体など、全ての大会が開催中止となった。

「3年の時、全国選抜に個人戦でも出られる予定だったんです。選抜で勝つと、全米オープンジュニアにつながる試合にも出られるはずだったので、すごく気合いが入っていたんです。でも選抜がコロナ禍でなくなり、続いてインターハイや国体も……そうですね、そこらの成績は自分でも欲しかった。そこから、進路も迷い始めたので……」
 
 全国選抜やインターハイでの戦績は、アメリカの大学でもスポーツ特待生の評価対象になり、奨学生としての好待遇も期待できる。その道が閉ざされたことは、海外へのハードルを高めただろう。

 それでも石川さんは、初心を貫く。「最終的な目標をツアーコーチと思った時、海外でしっかり英語も学べる留学が、一番良い選択だった」ためだ。

 そこで進学先を2年制のコミュニティカレッジに定め、語学や学力、テニスの戦績等を勘案し決まったのが、現在通う、カレッジ・オブ・デザート。BNPパリバ会場までは、車で15分ほどの立地だ。

 この進学先決定は、自身の意向というより、「条件的に、ここになってしまった感じ」と石川さんは打ち明ける。だが実はその偶然が、新たな縁を引き寄せた。

「うちの大学のテニス部のコーチの名前が、ガイ・フリッツ。テイラー・フリッツのお父さんだったんです」

 そのことを入学するまで知らなかったと、決まりが悪そうに笑った。
 
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