ただこの時、本人はもちろん見ている人々の脳裏にも、3か月前の全米オープンでの出来事がよぎっただろう。この全米でモンフィスは、フェデラー相手に勇猛に攻め、2セットを圧巻の奪取。だが続く第3セット、そして第4セットを奪われるとトーンダウンし、逆転負けを喫したのだ。
その失意の敗戦後、モンフィスはこう語っている。
「将来は孫に、『おじいさんは史上最高の選手相手に勇敢に戦い、もう少しで勝つところまで行ったんだ』と語り聞かせるよ」
それから、3か月後。彼は国を背負った大一番で、家族や友人たちが見守るなか、最後の最後まで攻撃の手を、そして進む足を止めなかった。
8年前のこのフェデラー戦こそが、彼が今も己を信じ、テニスに魅せられ、世界1位を破るポテンシャルを有する所以だ。
フェデラー戦を「鍵の試合」として挙げた後、一つの記憶の光が他の試合をも照らすかのように、モンフィスは次々と「大切な勝利」に言及した。
「フロリアン・マイヤーとの試合も大きかったな。初のトップ10からの勝利もすごく大きい。あれは2005年、ドーハでガストン・ガウディオに勝った試合だった。ダビド・ナルバンディアンに初めて勝った試合も……あれは大変な試合だったよ」
花火が次々と点火していくように思い出を辿る彼は、「なんか年寄りになった気分だよ」と、気恥ずかしそうに笑った。
世界の21位として挑んだ先のマドリード・オープンで、モンフィスはノバク・ジョコビッチに3-6、2-6で敗れた。これで対ジョコビッチの戦績は、18敗で勝利はなし。それでも、挑戦者は毅然と言う。
「全ての試合は“勝利のチャンス”なんだ。いつだって敗戦から、新しい学びがある。ノバクは、明日にも僕を破るかもしれないし、ローマやローランギャロスでもそうかもしれない。同時にそれらのいずれかで、僕が勝つかもしれないんだ」
かつて、“新4銃士”と呼ばれた同世代の選手のうち、ジル・シモンは今季限りの引退を、ジョー‐ウィルフリード・ツォンガも今年の全仏オープンを最後にコートを去ると表明した。同世代選手たちの多くがキャリアに幕を引いていくが、そのなか、モンフィスはまだまだ進む先を見つめている。
あの頃、いつか手にすると思われたグランドスラムタイトルは、未だ彼の手中にはない。それでも今も彼は変わらず、「テニス界の未来」を生きている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】モンフィスをはじめ全豪オープン2022で活躍した男子選手の厳選写真
その失意の敗戦後、モンフィスはこう語っている。
「将来は孫に、『おじいさんは史上最高の選手相手に勇敢に戦い、もう少しで勝つところまで行ったんだ』と語り聞かせるよ」
それから、3か月後。彼は国を背負った大一番で、家族や友人たちが見守るなか、最後の最後まで攻撃の手を、そして進む足を止めなかった。
8年前のこのフェデラー戦こそが、彼が今も己を信じ、テニスに魅せられ、世界1位を破るポテンシャルを有する所以だ。
フェデラー戦を「鍵の試合」として挙げた後、一つの記憶の光が他の試合をも照らすかのように、モンフィスは次々と「大切な勝利」に言及した。
「フロリアン・マイヤーとの試合も大きかったな。初のトップ10からの勝利もすごく大きい。あれは2005年、ドーハでガストン・ガウディオに勝った試合だった。ダビド・ナルバンディアンに初めて勝った試合も……あれは大変な試合だったよ」
花火が次々と点火していくように思い出を辿る彼は、「なんか年寄りになった気分だよ」と、気恥ずかしそうに笑った。
世界の21位として挑んだ先のマドリード・オープンで、モンフィスはノバク・ジョコビッチに3-6、2-6で敗れた。これで対ジョコビッチの戦績は、18敗で勝利はなし。それでも、挑戦者は毅然と言う。
「全ての試合は“勝利のチャンス”なんだ。いつだって敗戦から、新しい学びがある。ノバクは、明日にも僕を破るかもしれないし、ローマやローランギャロスでもそうかもしれない。同時にそれらのいずれかで、僕が勝つかもしれないんだ」
かつて、“新4銃士”と呼ばれた同世代の選手のうち、ジル・シモンは今季限りの引退を、ジョー‐ウィルフリード・ツォンガも今年の全仏オープンを最後にコートを去ると表明した。同世代選手たちの多くがキャリアに幕を引いていくが、そのなか、モンフィスはまだまだ進む先を見つめている。
あの頃、いつか手にすると思われたグランドスラムタイトルは、未だ彼の手中にはない。それでも今も彼は変わらず、「テニス界の未来」を生きている。
取材・文●内田暁
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