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海外テニス

内田海智、28歳でも成長してる!1年間で350位から168位へランクを押し上げた不屈の男が全米オープン予選参戦中<SMASH>

内田暁

2022.08.25

今年初めて100位台に入り新たな景色が見えてきた内田。全米オープン予選2回戦は現地8月25日に行なわれる(写真は全米予選会場にて)。写真:内田暁

今年初めて100位台に入り新たな景色が見えてきた内田。全米オープン予選2回戦は現地8月25日に行なわれる(写真は全米予選会場にて)。写真:内田暁

 コロナ禍でツアー転戦が困難だった時期も、彼は「逆にチャンスだなと思った」という。

「多くの選手が行けない、行きたくない状況で、どんどんチャレンジしていったら、誰かが僕を見てくれるんじゃないかって。人と違うことに挑戦しようと思ったので、他の選手が行かないことがモチベーションになったと思うんです」

 ちょっと捻くれた考え方なので――そう言うと彼はまた、口の片端を上げ、目には悪戯っぽい光を湛えて笑った。

 初めてランキング100位台に入ったのは、今年6月のこと。ポルトガルのATPチャレンジャー(下部大会)で優勝し、メキシコのATP250では予選を突破し本戦の舞台も踏んだ。

 こうなると周囲は突如、「最近好調だね」「何か変えたの?」と尋ねてくる。

 だが内田は、「何も変えてませんよ」とサラリと応じた。

「いろんな国で、いろんな選手とやってると、いろんな自信もついてくる。もともと自分のテニスには自信があったんで、こうやって周っていれば、どこかで必ずチャンスは巡って来ると思っていた。それがやっと、少し花が咲いた感じですね」

 それは、歩みを止めなければわずかでも必ず前進するという、内田にとっては、あまりに当然の摂理だった。彼が「人と違う」道を選んでいるように見えるのは、他の人が逸れていくだけで、彼の歩みはどこまでもまっすぐだ。
 
 グランドスラム予選に出られる今の地位は、長年、目指してきた場所ではある。ただ当然ながら、ここがゴールではない。

「本戦に出て勝つことが目標なので、ぜんぜん、そこに達してない。みんな『調子いいね、乗っているね』と言ってくれてるけれど、ぜんぜんそうは感じてないので」
 
 ジュニア時代に公言した夢は、「すべてのグランドスラムと、オリンピックでも優勝する」こと。

 それは、ほぼ不可能な夢ではあるが、「限りなくゼロでも、可能性があるうちは目指す“べき”だと僕は思っている」と彼は言った。「べき」と口に出したとき、自ずと音に熱がこもる。

「応援してくれる人もいるので、チャレンジするべきだなと思っているので」。

 それらの思いも受け止め、戦い続けること――それが内田曰く、「僕なりのポリシー」だ。

取材・文●内田暁

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