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海外テニス

テニス四大大会で“ダブルス・スペシャリスト”が勝ちにくくなった「新たな理由」<SMASH>

内田暁

2022.09.08

今年8月にダブルス世界1位(写真)になったココ・ガウフだが、本来はシングルスを主戦場とする選手で今年の全仏では準優勝した実力者だ。(C)Getty Images

今年8月にダブルス世界1位(写真)になったココ・ガウフだが、本来はシングルスを主戦場とする選手で今年の全仏では準優勝した実力者だ。(C)Getty Images

「私がグランドスラムに出始めた頃から、シングルスで強い選手がダブルスでも勝ってきている印象」

 そう述懐する青山は、だからこそ「ストロークなどベースの向上」の必要性を、常々口にしてきた。

 その青山たちが今大会で敗れた相手は、クレイチコワ/シニアコワ。グランドスラム5度の優勝を誇るダブルスの名手だが、サービスやリターンなど個々のショットの質の高さがやはり際立つ。

「ファーストサーブの確率も相手は良くて。ストロークも、コースやスピードもありますが、ボールの重さを感じました」

 それが青山の肌感覚。

 その現実を受け止めた上で、「まずは相手としっかり打ち合えることが大事。そのなかで、ロブやポーチを使って、どういう風に崩すかを考える“頭”を養っていくことです」と未来への展望を語った。

 そのように戦術や連携を深めていくには、固定パートナーが居るにこしたことはないだろう。ただランキング15位の青山にしても、チャン・ハオチンと組むのは東レパンパシフィックオープンまでで、以降のパートナーは未定だという。選手各々の優先順位も異なるなかで、二人三脚を通すのは易くない。
 
「6月以降は、ここ数年で一番良いテニスができている」と語り、その理由の多くをパートナーに求めたのは、加藤未唯。ただ、今大会でも組んだアルディラ・スーチャディはシングルスに出ていく意向もあり、今後はどうなるかわからないという。

 その加藤が挙げる「固定パートナーを作る難しさ」は、なかなかに興味深い。彼女の思う大きな障壁は、「住む地域や国籍」にあるという。

「ヨーロッパの選手だと、欧州に山ほど試合があるので、アメリカ行かないことが多い。逆のパターンもある。それに入国に伴いビザが必要な国の人たちも多いので、『ここの大会にはビザが間に合わないからいけない』ということもあります」

 ただでさえ試合が少ない上に、この2年間は国際大会がほぼ消えたアジア圏の選手にとっては、欧州も北中米も遠征という意味で大差ない。だが欧米の選手にとっては、近場で完結することも可能。その観点から、スケジュールをすり合わせるのが難しいというのだ。

 ダブルスでの強さを規定する因子も、ツアーの変容に伴い変わっていく。

 ただ、ダブルスの“チーム競技”的な側面は、テニスが有するもう一つの大きな魅力。ダブルス選手が、職人的な技や戦略性でシングルスのトップ選手を凌駕することで、その魅力は一層深まるはずだ。

現地取材・文●内田暁

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