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国内テニス

インカレ女王の阿部宏美と車いすテニスのホープ船水梓緒里。グランドスラムを道しるべに筑波大を旅立つ2人の絆<SMASH>

内田暁

2023.02.08

船水は昨年の全米オープンでグランドスラムデビューを飾る。「環境や雰囲気が他の大会と全然違う」と圧倒されたという。(C)Getty Images

船水は昨年の全米オープンでグランドスラムデビューを飾る。「環境や雰囲気が他の大会と全然違う」と圧倒されたという。(C)Getty Images

「高校では、テニス部に入らなかったです。国枝さんはテニス部に入っていなかったので、前例がなく難しいと言われました」

 地域の公営テニスコートを使うにしても、「コートを傷つけるので利用禁止」の壁が立ちはだかる。

「今は車いすテニスも使用可能になったのですが、以前は、私が住んでいた千葉県我孫子市の公営コートはダメだったんです。ただ高校のある柏市は車いすも受け入れていて、私は学生証があったので柏市のコートは使えたんです」

 高校のコートは使えない。住んでいる市の公営コートも使えない。だから彼女は、毎朝6時から7時半までTTCで練習に励み、そこから高校に向かった。

 彼女にとって「未知のスポーツ」であり、「一番難しいから」始めたテニス。ただやはり、「コーチと1対1でやる練習は、結構孤独な感じがあって」と振り返る。

「自分は中学までソフトボールをやっていたので、チームスポーツも好きだし、仲間が欲しいなって思って。そこでテニス部に入れる大学を探していた時、筑波大学の“アダプテッド体育・スポーツ学研究室”の存在を知りました」
 
「そこは、障がい者も健常者も一緒にスポーツがやれたら良いよね、という研究を専門にしていて、齊藤まゆみ先生という有名な教授もいらっしゃった。まず齊藤先生にアポをとり、それからテニス部の監督ともお話しさせていただいたら、『車いすでもテニス部に入れるよ』と言っていただけたので、筑波大学が視野に入ってきたんです」

 仲間が欲しい――そんな無垢な思いで進学した筑波大で、確かに彼女は多くの友人やチームメイトを得た。なかでも最も仲良くなったのが、冒頭に触れた、阿部宏美である。

「宏美とは同じクラスで、授業もほぼ同じのを取っていました。あと、自分は大学1年生の時に毎朝6時半から1限が始まるまでコーチと練習していたんですが、宏美も朝練していたので、一緒になることが多くて。それもあってすごく仲良くなったんです」

 早朝のテニスコートに向かう真摯な姿勢が、2人の学生アスリートを結び付ける。さらには、大学入学後に船水がぶつかってきた大小様々な障害も、2人の絆を深める要因となった。

「テニス部には入れたんですが、やはり私は2バウンドまでOKという車いすテニスのルールで打つので、他の部員たちと練習する機会はあまりなかったんです。宏美は、私がどうやったら部活に参加できるかを一番に考えてくれたし、車いす一般にもすごく興味を持ったみたいでした」
 
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