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海外テニス

全米4強シェルトンの父親が明かす指導者としての哲学「人間として成熟すれば、後からテニスはついてくる」<SMASH>

内田暁

2023.09.07

元世界55位の父親ブライアン氏(右)がベン(左)のコーチを務める。(C)Getty Images

元世界55位の父親ブライアン氏(右)がベン(左)のコーチを務める。(C)Getty Images

 今年の全豪時にその理由を尋ねた時、20歳の大学生は穏やかな笑みと共に言った。

「僕はジュニアの頃は、大した選手ではなかったんだ」

 父親は最高位55位の元ATPプレーヤー、母親もテニスコーチというサラブレッドが明かす、意外な過去。

 ただそれは、環境への小さな反発心もあり、少年時代はテニスに打ち込んでいなかったからでもあったという。フットボールに熱中していた少年が、真剣にテニスに打ち込み始めたのは13歳の頃。当然、勝てるようになるまでには時間が掛かった。

「13、14、15歳……18歳になっても、国内に僕より強い選手はたくさんいて、USTA(全米テニス協会)の大会に出てもあまり勝てなかった。

 だから父は、国内でまずは腕を磨くべきだと言った。アメリカで1位でもないのに、海外遠征に行く必要はない、行ったって結局は同じことをくり返すだけだって。それが、海外に行かなかった理由の一つ」
 
 さらに「もう一つの理由は」と言って、彼は続ける。

「僕は公立の高校に通っていたので、授業を休むことはできず、長期の遠征には行けなかった。ITF(国際テニス連盟)主催のトーナメントは一週間掛かるので難しかったけれど、USTAの大会は週末だけだったので、一日学校を休むくらいで済んだ。それら幾つかの条件が重なって海外には行かなかったんだ」

 理知的な口調で語られる理由は、確かに合理的ではある。

 ただもう一つ、ここで浮かぶ疑問がある。

 世界中を転戦する“ツアー”が生活の基盤となるテニス選手において、海外経験は何より重要であり、その経験を積むには早い……即ち若い方が良いと見られがちだ。

 自らもツアー選手として世界を旅した父親が、我が子に「海外に行く必要はない」とアドバイスを与えた背景には、どのような教育理念や、指導者としての哲学があったのだろうか?

 幸いにも今回の全米オープン中に、現在はシェルトンのコーチでもある父のブライアン氏に、その疑問を質す機会があった。
 
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