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海外テニス

ATPとWTAが組織統合に向け協議開催へ!ATP会長は「四大大会を含め男女が一緒になることだ」とビジョンを明かす<SMASH>

中村光佑

2023.09.12

テニス界レジェンドのジョン・マッケンロー氏(左)や、マルチナ・ナブラチロワ氏(右)は、サウジアラビアによる財政投資に難色を示しているようだ。(C)Getty Images

テニス界レジェンドのジョン・マッケンロー氏(左)や、マルチナ・ナブラチロワ氏(右)は、サウジアラビアによる財政投資に難色を示しているようだ。(C)Getty Images

 またイギリスメディア『Telegraph』は、現在四大大会では男女で同額の賞金が与えられているにも関わらず、「男子選手の収入は女子選手より約75パーセント多いと推定できる」と伝えている。

 そのうえで同メディアは「組織統合が行なわれた場合、男女を問わず全てのプレーヤーが各大会で確実に同額の賞金を受け取るために、“財政の再分配”が行なわれる可能性があり、それがまた議論を呼ぶかもしれない」と懸念点を示している。こうした背景から男女団体統括の議論はなかなか進んでこなかったようだ。

 それではなぜ事態は急展開を迎えたのか。『UBITENNIS』によると、まだその詳細は定かではないものの、近年様々なスポーツへの財政投資に積極的な姿勢を見せているサウジアラビアの脅威から逃れるためではないかとの憶測が飛び交っている。

 実はサウジアラビアは、潤沢なオイルマネーを活用したプロゴルフツアーへの投資が、同国の政府系ファンドが支援するLIVゴルフと米PGAツアー、欧州のDPワールドツアーの分裂を引き起こしたという黒歴史がある。LIVゴルフが、破格の賞金で世界のスタープレーヤーを招致したところ、米PGAツアーからLIVに移籍した一部の著名選手にPGAへの出場停止処分を科し、その対応が独占禁止法に違反するとして法廷争いに発展した。結局今年6月には、LIVゴルフ、米PGAツアー、DPワールドツアーは1つの商業団体として統合されることになった。
 
 テニス界がサウジアラビアの介入に難色を示す理由はこうした不祥事を避けるためだけではない。同国は、スポーツを利用して過去の人権問題や女性差別といった不都合な事実を洗い流す“スポーツウォッシング”が問題視されており、テニスのイメージを損なわないためにも、サウジアラビアの介入を簡単に許すわけにはいかないのだ。

 先日には、今年11月に開催される21歳以下の男子テニスシーズン最終戦「ATPネクストジェンファイナルズ」の開催地がサウジアラビアに決定し、27年まで同国での大会開催権を有することになったとも報じられたが、ジョン・マッケンロー氏(アメリカ)やマルチナ・ナブラチロワ氏(チェコ)をはじめ、サウジアラビアによる財政投資を快く思わないテニス界のレジェンドは非常に多いという。

 なお、ロンドンで行なわれる男女団体の合同協議は、組織統合の可能性を検討することを目的にしており、何らかの重要な決定が下されるわけではないと見られている。とはいえテニス界が新たな一歩を踏み出そうとしているのは確かだ。

文●中村光佑

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