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国内テニス

「未来を担う若者たちに夢とチャンスを与えたい」全豪オープンジュニア出場権争奪戦が果たす大きな役割<SMASH>

内田暁

2023.11.17

元プロの奈良くるみ(左)と土居美咲(右)はグランドスラムジュニアに出場したことでテニスに対する取り組み方に変化が出たと口を揃える。写真:内田暁

元プロの奈良くるみ(左)と土居美咲(右)はグランドスラムジュニアに出場したことでテニスに対する取り組み方に変化が出たと口を揃える。写真:内田暁

 その土居が、敬愛を込めて「雲の上の存在だった」と評する同期の奈良くるみは、今年から全日本ジュニアのトーナメントディレクターに就任。ジュニア時代からグランドスラムの舞台を踏み、そのまま世界で活躍した奈良は、全日本ジュニアにも「世界基準」の概念を取り入れた。

 試合当日の会場での練習確保や暑熱対策にしても、ツアーと同様のフォーマットを採用。選手たちには自ら声を掛け、悩みを聞き助言を与えてきた。その奈良が、「Road to AO」ではトーナメントアドバイザーを勤め、やはり会場で選手たちの戦いに目を凝らす。

「全日本ジュニアで活躍した子たちがこの大会にも出ているので、やはり応援したいなという気になります」

 そう語る奈良もやはり、「グランドスラムジュニアに出たことで、大人になって、ここに戻って来たいなという思いを持つことができた」と言葉に力を込めた。

 そのような格好のチャンスが得られるこの「Road to AO」の始まりは、2018年まで遡る。同年、住友ゴムは全豪オープンとオフィシャルスポンサーを締結し、翌年よりダンロップが公式球となることが決まった。かくして、同社とオーストラリアのテニス協会が手を結んだ時、「アジアでのテニスの普及と強化」が共通の願いとして立ち上がる。

「オーストラリアテニス協会としては、アジア地域での裾野を広げたいという考えがある。私たちとしては、ジュニアが育ち、世界に飛び出すというのは非常に夢のある話なので、それをサポートさせて頂きたいと思いました」
 
 ダンロップの母体、住友ゴム工業の川松英明スポーツ事業本部長が、述懐する。そのような両者の想いの交錯点で誕生したのが、この大会だ。

 ただいきなり、今の形になった訳ではない。初回大会で優勝者に与えられたのは、全豪オープンジュニアの前哨戦大会へのワイルドカードだった。

 2021年には、その前哨戦がコロナ禍により中止となったため、2020年優勝者のオーストラリア派遣を断念。それでもメルボルンへの扉を閉ざすことなく、翌21年にも「Road to AO」を開催する。

 その時の 優勝者は、男子が原﨑朝陽で、女子が木下晴結。当時はジュニアの国際大会がことごとく中止になり、ジュニア選手がランキングを上げるのは困難な情勢下であった。「Road to AO」の参戦者も日本人のみだったが、ダンロップがオーストラリアテニス協会と粘り強く交渉した結果、両選手には22年全豪ジュニアの予選ワイルドカードが与えられた。
 
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