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【テニスギア講座】コートに大量のラケットを持ち込むトッププロ。その理由はストリングの進化にあり!<SMASH>

松尾高司

2024.07.27

トッププロたちがコートに入場する時、片方の肩にダッフルバッグ、もう一方の肩にはとても大きなラケットバッグを担いでいるのを見かける。(C)Getty Images

トッププロたちがコートに入場する時、片方の肩にダッフルバッグ、もう一方の肩にはとても大きなラケットバッグを担いでいるのを見かける。(C)Getty Images

 グランドスラムなどで競り合う試合となると、60ゲームオーバーなんてこともあり、単純に「5セットだから5本でいい」というわけにはいきません。プロはだいたい8ゲームくらいごとに新しいストリングにチェンジしますから、最長試合などでは8本くらいのラケットが必要です。

 女子ではそこまで白熱することは滅多にありませんが、それでも毎試合「こんなに必要なの?」と思わせる選手は結構います。USオープンで22年間もオフィシャルストリンガーを務めてきた細谷理氏は、こんなふうに話しています。

「選手たちはほぼ毎日、ストリンギングブースに張り替えラケットを持ち込みます。その数は、年を追うごとに増えていて、かつてのシャラポワで1日に10本くらい、一番多いのがセレナ・ウィリアムズで、毎日15本くらい張り替えに来ていました」

 選手たちは、まず練習用として、オフィシャルストリンガーの張り具合を確認し、それによってテンション指定の調整をしてから、本戦用の張り指定を決めてきます。全て同じ仕上がりに...という選手もいますが、試合での調子や相手に合わせて、テンションを1~2ポンドの差で段階的に用意する選手もいます。
 
 プロの大会では必ず「ストリンガー」を用意することが義務付けられ、ストリンギングルームには、大会数日前の練習・予選から連日、多くの張り替えが持ち込まれます。かつてプロ選手がナチュラルガットを使っていた頃は、そんなに張り替えの本数は多くありませんでしたが、ポリエステル時代の現在では、以前の2~3倍、どんどん増え続けています。

「これまでのUSオープンでは、20日間トータルで5000本台の張り替え数でしたけど、今は6000本を超え、どんどんその数は多くなっています」と細谷氏。

 それに対応するストリンガーの数は、グランドスラムで20~25人くらい。ストリンガー全てが均等に張るわけではなく、担当選手によってものすごく多い場合もあります。そういう時には、早朝から張り始めて深夜の1~2時まで張り続け、翌朝も6時から張り始めるという具合で、ストリンガーたちはものすごい重労働を強いられるのです。

 現場で毎日、フレッシュなポリエステル系に張り替えなければならない現代のトーナメントでは、彼らがいないと絶対に成り立ちません。日本国内でも、プロ大会はもちろん、学生大会でもストリンギング・サービスは当たり前になっています。

 プロはこのように、試合前のフレッシュストリングが必須ですが、一般愛好家の皆さんもずっと張りっ放しでいいわけはありません。ストリングの性能を生かしていい感じで打てるよう、こまめに張り替えましょう。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2023年1月号より抜粋・再編集

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