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海外テニス

錦織圭、全豪オープン大逆転劇のテニスコートに交錯した「想定内」と「想定外」<SMASH>

内田暁

2025.01.13

大観衆が見守るコートで再び演じられた「ファイナルセットに強い錦織」の戦い。(C)Getty Images

大観衆が見守るコートで再び演じられた「ファイナルセットに強い錦織」の戦い。(C)Getty Images

 対するモンテイロには、「1~2セットは、作戦をもの凄く高いレベルで実行できた」との実感がある。ただ一つ、彼の中でも「想定外」だったのが、切れ味鋭い錦織のサービスだ。

「今日の彼は、サーブが凄く良かった。エースを17本も決められた」

 後にモンテイロが、打ち明ける。想定通りに物事が進む時ほど、想定外が重くのしかかるだろう。予想を上回る錦織のサービスに、彼も重圧を覚えていた。マッチポイントを逃した直後のゲームで、盤石だった彼のサーブに綻びが見えたのは、心理的圧迫感も影響しただろう。この試合12度目のブレークポイントで、ついに錦織がブレーク。ファンの大声援を背に、元世界4位が3セット目を奪い返した。

 第4セットに入った時、潮目の変化は誰の目にも明かになる。モンテイロのファーストサービスが入らなくなり、それに伴い、錦織のリターンが鋭さを増した。第3ゲームをラブゲームでブレークした錦織は、第5ゲームも相手のダブルフォールトでブレーク。この直後、モンテイロはメディカルタイムアウトを取り、その後はボールを追わない場面も増える。やや一方的な展開で、第4セットは錦織が取った。
 
「ケガと言うほどではなく、足の付け根に張りと違和感を覚えた。テーピングをしてもらい、痛み止めを飲んだらおさまった」

 試合後にモンテイロは、そう説明しケガを言い訳にはしなかった。
 
 ただ展開的にも劣勢になるなかで、今度は誰もが知る錦織の特性が、彼の心身に重くのしかかっていただろう。それはもちろん、現役選手中最高勝率を誇る、錦織のファイナルセットでの強さ。

 逆に錦織は「みんなが教えてくれるから、6~7年前から自分の最終セットの勝率が良いことは知っていた」と笑う。ファイナルセットも第3ゲームを錦織がブレーク。この時点で、試合の行方は、ほぼ決した。

 試合後の会見では、英国や地元記者らがこぞって、錦織に「ファイナルセットに強い理由」を尋ねる。メディアやファンも良く知るこの事実が、最終セットでの“大衆のコート”を、錦織勝利の予感で満たしたのは間違いない。

 二人の「想定内」と「想定外」が交錯する中、錦織に勝利をもたらしたのは、この日のコート上で生まれた要因だけではない。錦織がこの地で、足かけ16年間演じてきた逆転ドラマの数々。そしてキャリアを通じ集積してきた、歴史の重みの勝利でもあった。

現地取材・文●内田暁

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