「このサーフェスだとか風だとか、今日のコンディションは意識しました。跳ねるコートは、自分のボールが活きるコートでもある。最初は緊張もありペースがつかめなかったけど、途中からスピンを混ぜたら、相手がすごく嫌がっているのが見えた。そこからは意図的に混ぜましたけど、それが自分のベースのプレーでもあるので、それを相手が嫌がってくれたなら、それはそれで良かったです」
　
　加えてこの日の内島は、ドロップショットやボレーなど、プレーのバリエーションが実に豊富。それは、以前からやりたいと思っていたテニスだったという。

　ただこれまでは、練習での精度もそこまで高くないため、試合では使えなかった。それが今年に入った頃から、手札のカードを適宜切れるようになったという。その理由を本人は、「余裕……なんですかね？」と、自身に問いかけるように言葉を紡いだ。

「多分、ベースのショットの質が上がったから早く構えられるようになり、一瞬ですけど、先のことまで考える余裕が出たんだと思います。WTAツアーに移行したばかりの頃は、名前負けもあったし、先のことまで考える余裕も無かったんです。そこから少しずつ経験を積み、フィジカルも強化してきた。WTAレベルのショットスピードや、いろんな相手に対応できるようになってきたというのはあると思います」

　話しながら、自身の成長のプロセスを再認識した内島は、「今日の試合がすぐ終わっちゃったように感じたのは、集中していたからかもしれませんね」と笑った。
  　初出場の大会で、いきなりセンターコートに立ち、グランドスラム優勝経験者から手にした白星。その勝利の先で内島が当たるのは、世界３位のココ・ガウフ（アメリカ）。シングルスでの対戦はないが、ダブルスでは、2023年１月の全豪オープンで当たっている。

「ダブルスで当たった時は、ガウフのサーブが速くて、何もできなかった」

　２年前をそう振り返る内島は、来たる対戦に向け、こう語った。

「その時よりは自分もちょっと成長しているだろうし、また自分の力が試せるのはうれしい。逆にこれくらい強い相手の方が、ありがたいのかもしれないです。彼女も地元で相当気合い入れてくるだろうけれど、しっかり準備して、『自分らしく』というのを忘れずにやりたいです」。

現地取材・文●内田暁

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