ジュニア時代から潜在能力を広く認められ、環境や指導者など何かきっかけがあれば一気に開花するのではというのは、多くの識者が綿貫に抱く認識ではあった。

　錦織圭も、綿貫のポテンシャルをいち早く買っていた一人。綿貫が18歳の時点で「日本でトップクラスのフォアハンド。あれだけの回転とスピードを兼ね備えたフォアはなかなかない」とAプラス評価を与えていた。

　その錦織に、綿貫のインディアンウェルズでの活躍について問うと、「今回で本当に確信しましたね」との言葉。

「30位くらいまでは、余裕でいけそうだなって。もちろん、彼も身体のことで結構苦労してますし、いい流れを続けることが必須にはなりますけど、20～30位とやっててもラリー戦で引かないし、十分戦えている。フォアが良いしサーブも良いし、バックも良い。特に最近はリターンも良くて。これを続ければ、本当にトップ50は余裕で入れるだろうし、そこからもっと上もすぐ見えてくると思います」

　まさに、大絶賛である。
  　錦織の言う「継続」が何より鍵になるのは、綿貫本人も重々承知。インディアンウェルズでこれだけの活躍をしても、マイアミではまた予選からの過酷な再スタートとなる。

　それでも綿貫は、「今の僕のランキングでいえば、予選に出られること自体がありがたい」と虚心坦懐。

「プロテクトランキング（負傷離脱前のランキングでエントリーできる救済措置）がまだ使えるので、タイミング的に良かったなって。それがなかったら、ヨーロッパのクレーのチャレンジャーとかに行かなきゃいけなかったので。やっぱりマスターズは予選でも出られると、すごくモチベーションにもなります。選手はみんな、こういう環境に身を置きたいと思ってやっているし、予選でもすごくハイレベルなので。

　僕にとっては、たくさん試合ができることはありがたい。今回ウェインさんに初めて見てもらって、色々教えてもらって、こういう時間を一緒に過ごせることが今の僕には大切」

　だから予選からの再挑戦に関しても、「どちらかというと、ポジティブな気持ちの方が大きいです」と彼は言った。

　周囲に感謝し、あらゆる状況を前向きに捉え、次なる陽の当たる大会開催地へと向かっていく。

現地取材・文●内田暁

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