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海外テニス

日比野菜緒、全仏オープンテニス予選突破!伴侶と取り組んだ新たなプレースタイルが苦手なクレーで結果を導いた<SMASH>

内田暁

2025.05.25

激戦を勝ち切って予選突破を決めた日比野は試合後、スタンドで見守る増田氏の元に駆け寄った。写真:内田暁

激戦を勝ち切って予選突破を決めた日比野は試合後、スタンドで見守る増田氏の元に駆け寄った。写真:内田暁

 苦しみながらも9週間赤土の上で戦い続けた経験は、勝負を懸けるべきパリのコートで、ついに大きな実を結ぶ。特に予選2回戦では、元世界4位にして、直近のローマ大会で上位勢を破り4回戦に勝ち進んでいたビアンカ・アンドレスク(カナダ)に勝利。土俵際まで追い詰められるも、己を鼓舞し、ボールを追い続け、相手を前後に揺さぶりながら勝利を手元に引き寄せた。

 予選決勝に挑む時も、日比野と啓孝氏が共有したプランは、基本は「長期戦勝負」。相手は強打こそあるも、経験ではこちらが勝る。神経戦に持ち込めば、優位との思いがあった。

 果たしてその策は、九割がた奏功する。第1セットを落とし、第2セットも相手にリードを許したが、勝負が近づくにつれ20歳の相手に硬さが見られた。第2セットを逆転で取ると、第3セットはブレークで先行。すべては作戦通りかに見えた。

 だが後がなく開き直った相手は、リターンで驚異の集中力を発揮する。
 
 この試合での日比野陣営のサービスゲームの基本プランは、「無理せずファーストサーブを入れて、ラリー戦に持ち込むこと」。だが終盤に来て相手は、少しでも甘いサービスは迷いなく打ち抜いてきた。ブレークするも、直ぐにブレークされるもどかしい展開が続く。

 そして、ゲームカウント5-4とリードした、勝利へのサービスゲーム――。チェンジオーバーを終えコートに向かう日比野に、啓孝氏は声を掛けた。

「サーブで行くか、ラリーで行くか、自分で決めて!」

 それはコーチから選手への、「プランB」の提示。

「どっちが正解かは、わからない。最後は、自分の感覚で決めてというつもりで言いました」

 試合後、安堵と憔悴の混じる笑みで、啓孝氏が明かした。

果たして日比野の選んだ策は――結果を見れば、明らかだろう。最後はコーナーを狙った渾身のサービスが、際どくラインを捉える。それは、1月からの葛藤の日々と、先を見据えた赤土のロード選択。そして“自分のスタイル”構築と状況に応じた決断力が、一点で収束した瞬間でもあった。

現地取材・文●内田暁

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