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海外テニス

【レジェンドの素顔5】“悪童”マッケンローが見せた初めてのサービス精神。7か月間の休養で自信を取り戻す|前編<SMASH>

立原修造

2021.03.31

7か月間の休養から復帰したマッケンローは、かつての自尊心を全く失っていなかった。写真:THE DIGEST写真部

7か月間の休養から復帰したマッケンローは、かつての自尊心を全く失っていなかった。写真:THE DIGEST写真部

ヤツがナンバーワンだって?

 うれしくなってしまう。
 今年8月に復帰したときのマッケンローが、いささかも自尊心を失っていなかったからだ。

 まず、ベッカーをこきおろした。
「ヤツがナンバーワンだって?冗談じゃないぜ。オレがいないときにウインブルドンに勝ったって、それが何になる?」

 次に、テニス界全体を嘆いた。
「休んでいて一番思ったのは、オレがいないテニス界って、なんて盛り上がらないんだろうってことさ。ウインブルドンでいくら入場者のレコードを作ったからといっても、あくまでも数字だけの話で、とても中身がともなっていたとは思えないね」

 さらに、こう結んでいる。
「オレがいなくちゃ、今のテニス界はどうしようもない。なにしろ、世界中のテニスファンがオレを待っているんだからな」

 どうだろう。この堂々とした復帰の弁。一時、引退説までささやかれた男の言葉とは、とても思えない。
 
 7か月間にわたった長期の休養が、ことのほか彼をリフレッシュさせたのだろう。その間、6週間もラケットにさわらなかった時期もあったが、ヨガやウェートトレーニングにも積極的に取り組み、やるべきことはすべてやった。それが吉と出るかどうかは長い目で見なければわからないが、最も大切な“自信”を取り戻したことは確かなようだ。

 復帰に際し、マッケンローはケジメをつけた。8月1日、テータム・オニールと正式に結婚式をあげたのだ。式に列席したピーター・フレミングやビタス・ゲルライテスも、「あんなに幸せそうなマックを初めて見た」と語っている。長く続いた私生活の不安が解消されて、心から人生最良の日を味わったことだろう。

 式を終えて、マスコミ陣やファンの前に姿を見せた二人は幸せそのものだ。マッケンローは、はにかみながら精一杯の笑顔をつくっていた。マスコミ嫌いのマッケンローがマスコミ陣に初めて見せたサービス精神だった。

 ここにも、マッケンローの"自信"はうかがえる。いくら結婚式とはいえ、真近に迫った復帰にある程度の勝算がなければ、これほどの余裕は見せられないものだ。あるいは、不安でしょうがなければ、わざわざこんな時期を選んで結婚式をあげたりはしないはずだ。

 マッケンローはその気になっている。この結婚式はテニス・プレーヤーとしてのマッケンローにとっても門出の場だった。
(続く)

文●立原修造
※スマッシュ1986年12月号掲載原稿に加筆・修正

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