専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

【レジェンドの素顔6】クリス・エバートをチャンピオンへと導いた2つの幸運|前編<SMASH>

立原修造

2021.04.07

クリス・エバートの辛抱強さは父親のしつけによって培われた。写真:THE DIGEST写真部

クリス・エバートの辛抱強さは父親のしつけによって培われた。写真:THE DIGEST写真部

クリスのテニスの本質―――

 クリスがデビューして連戦連勝を続けていたとき、人々は彼女を“氷のようなクリス“と評していた。どんなピンチになっても、表情一つ変えないことが、氷のもつ冷たさにたとえられたのである。

 クリスのテニスの本質――。それは、一言で言って、“辛抱強さ”ということではないだろうか。

 サービスはそれほど速くないし、ネットプレーも巧みとはいえない。ストロークにしても特別スゴイというわけでもない。しかし、彼女は、どんな局面になっても、ストロークで深いクロスを打つことができる。これはまさに彼女のツボである。

 深いクロスのストロークを打てるプレーヤーは何人もいる。しかし、どんな局面でも、となると話は別だ。相手がネットに押し寄せてきて大ピンチのとき、それでも冷静にクロスにパスが打てるプレーヤーは稀である。 “辛抱強さ”を常に持っていられるからこそ、どんな局面でも慌てないのだ。
 
 こうした精神力は、いくらボールを打ち込んだからといって備わってくるものではない。まず、生活環境の中で“辛抱強い”性格を身につけることが先決だ。これはむずかしい。時代そのものが、子どもを甘やかす風潮になってきていたときである。

 次に、その“辛抱強い”性格をコート上でどう生かすかも問題となってくる。テニスというのは、どうもせっかちなスポーツにできているようだ。相手よりポイントを多く取りたいがために、誰もがあせりがちだ。その結果、無茶なショットを打ってミスを重ねていく。そんなことは百も承知なのに、いざテニスコートに立つと、気持ちが空回りして平常心を失ってしまう。どんなに達観した人をも狂わすような魔物が、テニスコートには潜んでいる。

 ジミーは、もしクリスが長くテニスを続ける気でいるのなら、まず“辛抱強さ”を徹底的に養うべきだと考えた。クリスは幼い頃から内気でおとなしい性格だったので攻撃的なテニスは向かないと見抜いていたのだ。それからというもの、ジミーはクリスに、家庭でもテニスコートでも常に耐えることを学ばせた。まさに両面作戦である。さて、ジミーは一体、どのようにクリスを導いたのだろうか。

~~続く~~

文●立原修造
※スマッシュ1987年1月号から抜粋・再編集

【PHOTO】ボルグ、コナーズ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号