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海外テニス

パワーかテクニックか…ヒンギスら、かつての天才プレーヤーが考える、現代女子テニスの潮流とは?

内田暁

2019.11.02

女子テニスは豊かな個性のもと、流動的に立場が入れ替わる。2020年のグランドスラムは果たして?(C)Getty Images

女子テニスは豊かな個性のもと、流動的に立場が入れ替わる。2020年のグランドスラムは果たして?(C)Getty Images

 なお、いずれも「センス」や「手の感覚」が称賛されてきたヒンギスとラドワンスカだが、それらをいかに獲得してきたか、また、それらは天性のものかという命題に対する解釈の差異が興味深い。

 天才少女の名を欲しいままにしてきたヒンギスは、「私は小さい頃に、ドロップショットなどを何万本と打ってきた。そうしないと上達しない」と明言する。また、ロジャー・フェデラーなどスイスには天才肌の選手が多い理由について問われると、次のように返答した。

「スイスは山と自然に囲まれた国で、意識しなくても小さい頃からハイキングや登山、それにスキーなど多くのスポーツをしながら、色んな身体の動かし方を体得できる環境にある。それに、ロジャーはサッカー、私は乗馬を子供の頃からやっていた。そういうのも生きていると思う」
 一方で、自身の持つ才能は「天性のもの」と言うのは、ラドワンスカだ。「良い手の感覚を練習で体得するのは難しい。私が練習してもパワーテニスができないのと同じこと。良い感覚は、それを持って生まれたか、あるいは持っていないかという類のもの」。
 それが、“ホット・ショットの女王”と呼ばれた彼女の見立てである。

 2人の意見のどちらが正しいかはさておき、このように異なる分析が出てくるのもまた、現在の女子テニス界が多様性に富み、多くの議論を生む土壌があるからだろう。
 豊かな個性が流動的に立場を入れ替え、周囲の識者やファンたちも引き込みながら、カレイドスコープのようにその時々で異なるアートを描く――それが、今の女子テニス界だ。

取材・文●内田暁

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