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海外テニス

女子テニス界屈指の技巧派ジャバーを世界2位へと押し上げた「本気で自分を信じる覚悟」【シリーズ/ターニングポイント】<SMASH>

内田暁

2023.01.14

2022年はウインブルドンと全米オープン(写真)で準優勝に終わったが、現在のジャバーならその悔しさを大きなエネルギーとして生かすはずだ。(C)Getty Images

2022年はウインブルドンと全米オープン(写真)で準優勝に終わったが、現在のジャバーならその悔しさを大きなエネルギーとして生かすはずだ。(C)Getty Images

「アフリカ出身女性初のグランドスラムファイナリスト」、「オープン化以降初のアラブ系グランドスラム単決勝進出者」

 それらが、彼女が直近に打ち立てた、フロンティア最前線の旗である。

 さて……ここまでが言わば、前置きである。

 転機の糸を新たな転機と決断で紡いできたような、彼女のキャリア。その中で、最も重要なターニングポイントとは――?

 今年のウインブルドンで、世界2位になった彼女にたずねた。

 その問いに27歳(当時)のエンターテイナーは、ユーモアの色調を幾分抑えた口調で、応じた。

「正直に言うと、何か一つだけを取り上げるのは難しい。なぜなら、あまりに多くの人々が、今日に至るまでわたしを助けてくれたから。もちろん、ITFの基金は大きかった。トップ100に入り、多くの事が好循環したきっかけだった。

 わたしは、遅咲きだったと感じている。わたしのテニスは他の選手とは違うから、適応するのに時間が掛かった。その中で、フィットネスコーチである夫のサポートも大きかった」
 
 それら具体的な支援に言及した彼女は、やや言葉を区切り、「ただ……」と続けた。

「思い返せば2019年が、わたしの頭の中がガラリと変わった時だったと思う。あの頃のわたしは、60位や80位に居る自分に、つくづくうんざりしていた。自分のいるべき場所はトップ10だと、本気で思った。

 わたしは『もう十分だ! 今こそ自分を律し、本気で自分を信じる時だ』と言い聞かせた。すると2020年の全豪オープンで、本当にベスト8に入れた。

 そこから、全てが噛み合い始めた。多くのツアーで勝てるようになり、成長を感じられた。幸運なことに、わたしには素晴らしいチームもいる。コミュニケーション面でも文化面でも、わたしを理解できる人たちに恵まれた」

 環境の変化、経済的支援……人々はともすると、それら可視的な物に、変化の理由を求めがちだ。だが、真に彼女を変えた因子は、彼女自身の内にあったという。

 多彩な業師が、未踏の荒野を切り開く上で手にした、最後にして最強の武器――それは、地平の向こうを指し続ける、強き心の針だった。

取材・文●内田暁

オンス・ジャバー/1994年8月28日生まれ。チュニジア出身。身長167cm。右利き・バックハンドは両手打ち。ジュニア時代は公的機関の援助を受けながら成長。フォアハンド、ボレー、スライス、ドロップショットを得意とする女子では珍しい技巧派で、2022年は7大会で決勝進出を果たし2大会で優勝。ウインブルドンと全米オープンでは準優勝した。(世界ランキング2位/2023年1月9日付)

※スマッシュ2022年11月号より抜粋・再編集

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