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海外テニス

望月慎太郎と島袋将がウインブルドンで初の予選突破!異なる道を歩んできた二人の“共通する信念”<SMASH>

内田暁

2023.07.01

勝利を分かち合った“チーム島袋”。右から佐藤文平マネージャー、トーマス嶋田コーチ、大瀧レオ祐市トレーナー。写真:内田暁

勝利を分かち合った“チーム島袋”。右から佐藤文平マネージャー、トーマス嶋田コーチ、大瀧レオ祐市トレーナー。写真:内田暁

「やっぱり“テニスの聖地”と聞いていたので。ジュニア時代から、『ウインブルドン、ウインブルドン』と言っていました」

 照れた笑みと共に島袋がそう言ったのは、予選初戦を突破した時だった。

 グランドスラム予選デビューが、ジュニア時代からの憧れの地。芝でのプレー経験はほとんどないが、「僕のフラット気味のフォアは、芝で効く」との手応えを、手のひらに残していた。

 高校時代までのシングルス戦績は、「インターハイのベスト8」が最高。

 同期には世界で活躍するジュニアも多い中、「高卒でプロになる自信はなかった」とも明かす。

 それでも早稲田大学進学後も、「プロになる」の決意と、「自分の武器はフォアを生かした攻撃力」の信念は貫き通した。

「大学1年目は全然勝てなかったんですよ、ミスが多くて」と認めるも、「自分のテニスは絶対に変えたくなかった。先のないテニスはしたくなかった」と言う。

「監督やコーチはヒヤヒヤしたと思います」と申し訳なさそうにこぼすが、結果的に2年時に全日本大学選手権を制したことで、懐疑の声も封じてみせた。
 
 同時に在学時から、卒業後のプロ転向に向け、準備を進めていたという。ナショナルチームの学生枠に選ばれたため、人脈が広がったことも大きい。大学の先輩でもある佐藤文平氏に、スポンサーやチーム編成について相談もした。

 大学講師に軸足を置く佐藤氏にしてみれば、自由に使える時間は限られる。ただ、プレーのポテンシャルや体格、そして人間性やカリスマも含め、島袋に大いなる可能性を感じた。過去に大卒でプロになった選手は数多くいるものの、それら先人たちの経験が「紡がれていない」ことに危機感を覚えていたともいう。

「大卒でプロになった選手にとって一番危険なのは、すぐ大海原(=ツアー)に出てしまうこと」

 常々その点を危惧していた佐藤氏は、コロナ禍の時間も活用して資金を調達し、クルーを集め、海図を引いた。コーチのトーマス嶋田にトレーナーの大瀧レオ祐市、そしてフィジカルコーチの松田浩和は、いずれもATPツアー帯同経験者である。

 プロ転向から3年で到達したグランドスラム本戦は、綿密に計算した「最短航路」の帰結。その港がウインブルドンだったのは、己のスタイルを貫く島袋の実直さが、憧れの地を真っすぐに指したからだ。

 異なる道を歩んできた望月と島袋に通底するのは、一本芯の通った信念と、その決意を信じる周囲の助力。そしてここをゴールではなく、スタートラインと見なす視線だ。

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】ウインブルドンJr.を制した望月慎太郎の基本に忠実なリターン連続写真!

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