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海外テニス

「片手打ちバックハンド」は絶滅危惧種なのか?男子テニス世代交代の波とともにプレースタイルも転換期に<SMASH>

内田暁

2024.03.07

現在の片手打ちたちの手本になったフェデラーは、サンプラスのバックハンドに憧れを抱いたという。(C)Getty Images

現在の片手打ちたちの手本になったフェデラーは、サンプラスのバックハンドに憧れを抱いたという。(C)Getty Images

 40年近くを遡ったある日、そんな嘆きを口にした、未完の大器がいたという。

 それは、元世界1位のアンドレ・アガシ(アメリカ)の兄。アンドレ同様に幼少期から父にテニスを仕込まれたフィル・アガシのバックハンドは、片手打ちだった。

 選手としては大きな成功をつかめず、やがて、若くして頭角を現した弟のコーチとして下部大会を転々とした兄。そんなフィルは国内の大会会場で、弟と同じ年ごろの少年の練習を見ながら、ふとつぶやいたという。

「彼はダメだな。バックハンドが片手打ちでは大成しない。才能があるのに、可哀そうに……」

 そんなフィルの言葉を聞き、アガシは「きっと兄は、自分をその少年に重ねているんだろうな」と思ったと、自叙伝で明かしている。
 
 なお、その時の片手打ちの少年については、「誰だったかな? 確かギリシャ系の、なんちゃらサンプラスという名だったと思う」と明かすオチがついている。

 その後、世界1位となったピート・サンプラス(アメリカ)に憧れたのがフェデラーであり、フェデラーに憧れた少年たちが、絶滅危惧種となりかけている片手打ちバックハンドの今を支えている。

 利き手一本でつないだこの系譜は、果たして継承されていくのか? あるいは、USTAのコーチが予見するように、現状に拍車が掛かるのか?

 22歳のヤニック・シナー(イタリア)の全豪オープン優勝で幕を開け、“世代交代”の気配が例年以上に色濃くなりだした今シーズンは、プレースタイルにおいても、一つの転換期になりそうだ。

文●内田暁

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