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国内テニス

届かなかった夢の舞台、美濃越舞が10年間のプロテニス生活に終止符!「自分の中で出し尽くしたと思えてる」<SMASH>

内田暁

2021.08.14

プロテニスの舞台から降りた美濃越は今後について「自由にやってみたいです」と未知との出会いを心待ちにする明るさに満ちている。写真=THE DIGEST写真部

プロテニスの舞台から降りた美濃越は今後について「自由にやってみたいです」と未知との出会いを心待ちにする明るさに満ちている。写真=THE DIGEST写真部

 その足りない何かを模索し、自己最高位に達した2018年後半からの1年間は、「できることは、すべてやった」。

 スポンサーなどの金銭や環境のサポート面、コーチやトレーナーなどの指導者たち。

 強くなるために必要と思えるものはすべて揃え、試し、違うと思えば時に切り捨てた。

「勝負どころで勝ち切れないのは、気持ちの問題かも」と内省的になるも、「それで片付けてしまったら、先に進めない」と、基礎練習やフィジカル強化に今まで以上に打ち込みもした。

 それでも、思うように結果が残せなかった19年の夏、当時19歳の大柄な中国人選手に圧倒された時、「あ。これで終わりかな」と、ふと悟ったという。

「自分の持っているものを出しても、なかなかポイントが取れない。そういう試合はあるんですが、特にあの試合がこたえて」

“引退”というものの輪郭が見えないままにその時を思った、数年前とはまるで違う心の動き。

「本当に自分の中で、やり尽くした、出し尽くしたと思えている」

 そう明言し自ら幕を引く、一つのキャリアの終焉だった。

 2年近く前に決意した引退の日が今夏まで伸びたのは、お世話になった安藤証券主催の大会を、最後の舞台にと願ったため。昨年はコロナ禍で大会が中止となったため、この7月にその時は設定された。
 
 プロテニスプレーヤーの肩書を下した今、美濃越は、“正しさの基軸”を失ったような状態だという。これまでは、テニスがうまくなるため、強くなるためという、明確な行動指標があった。

「でもテニスがなくなると、食事にしても睡眠にしても『これで良いのかな』って思ってしまって……迷子です」

 それは文字にすると、困惑の表出に見えるかもしれない。ただ言葉を口にする美濃越の表情は、迷いを楽しみ、未知との出会いを心待ちにする明るさに満ちていた。

 今は、新たな“基軸”を性急に求めてもいないという。

「どちらかというと、自由にやってみたいです」

 それが彼女の想いであり、現在地だ。

 柱が無くても大丈夫と思えるのは、今の彼女が外界ではなく、自分の内にゆるぎない自信と基軸を獲得したからだろう。その強さを彼女に与えてくれたのは、22年間ともに歩んできた、テニスなのは間違いない。

取材・文●内田暁

【PHOTO】10年間のプロ生活に幕を下ろした美濃越舞フォトギャラリー
 

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