198センチの長身から繰り出す強力なサービスや安定感抜群のストロークを武器に、これまでに最高峰の舞台である四大大会で3度の準優勝を経験し、24個のツアータイトルを獲得している男子テニス世界ランキング3位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/28歳)。そんな彼もかつては試合中に感情をコントロールできず、ラケットを叩き壊すことも珍しくなかった。しかし近年はそうした姿をほとんど見せなくなっており、本人いわく最後にラケットを壊したのは「2年か3年半前くらい」までさかのぼる。
現在開催中のマスターズ1000大会「ナショナルバンク・オープン」(7月27日~8月7日/カナダ・トロント/ハードコート)でもズベレフのメンタル面での成長ぶりが光っている。現地4日に行なわれた前回覇者アレクセイ・ポピリン(オーストラリア/26位)との準々決勝では、それが如実に表れた。
第1セットを6-7(8)で落とし、第2セットも4-1リードからブレークバックを許すなど苦しい展開が続いたズベレフ。それでも終盤の第10ゲームで2度目のブレークを奪って6-4でセットオールとすると、ファイナルセットも6-3で制し、2時間42分の逆転勝利でベスト4進出を決めた。
試合後にズベレフはプレー内容を振り返り、数年前なら第1セットを失ったところで「間違いなくラケットを壊していた」とコメント。「もうラケットは壊さない」との力強い言葉に、かつての弱かった自分と決別する並々ならぬ決意と覚悟が感じられた。
その上で、若い頃は感情の起伏が激しく、年を重ねるごとに自制心を身に付けていった元世界1位のロジャー・フェデラー(スイス/2022年引退)と自身を重ねるようにこう続けた。
「ロジャーも昔は頻繁に怒りをあらわにしていたが、そこから変わっていって、やがて誰もが知っている“ロジャー・フェデラー”になった。どこかで意識が変わったのだろうね」
もっとも試合中の冷静さを身に付けることができたのは、21年3月に元恋人のブレンダ・パテアさんとの間に娘のマイラちゃんが誕生し、父親となったことが大きいとズベレフは明かす。また単純に“試合中にスポーツマンらしくない振る舞いをする選手”とは記憶されたくないとの考えから、コート上での言動にも気を配るようになったそうだ。
「父親になった今、良い手本になりたいと思っている。僕はテニスで人々の記憶に残る選手になりたい。コート上での成果や、自分が成し遂げたことで評価されたいんだ」
「オフコートで自分が取り組んでいる活動でも記憶されたい。自分と同じ一型糖尿病を持つ人々を支援する財団での活動や家族との取り組みには、人の役に立つものが多いと感じているし、世界中の人々の助けにもなっていると思う。過去の感情的な振る舞いで記憶されるよりも、良い行動を通じて覚えてくれる方がはるかに望ましい」
“記録にも記憶にも残る選手”になるべく、1人の父親として、そして1人のトップアスリートとして成熟した姿を見せているズベレフ。今後もさらなる活躍を期待したい。
文●中村光佑
【動画】ズベレフが前年覇者ポピリンを逆転で下したナショナルバンクOP準々決勝ハイライト
【画像】ズベレフをはじめ、2025ウインブルドンで躍動した男子トップ選手たちの厳選フォト
【関連記事】ズベレフは今も名将トニ氏のコーチ就任を諦め切れず説得中。女子レジェンドが「興味深いタッグになる」と実現を期待<SMASH>
現在開催中のマスターズ1000大会「ナショナルバンク・オープン」(7月27日~8月7日/カナダ・トロント/ハードコート)でもズベレフのメンタル面での成長ぶりが光っている。現地4日に行なわれた前回覇者アレクセイ・ポピリン(オーストラリア/26位)との準々決勝では、それが如実に表れた。
第1セットを6-7(8)で落とし、第2セットも4-1リードからブレークバックを許すなど苦しい展開が続いたズベレフ。それでも終盤の第10ゲームで2度目のブレークを奪って6-4でセットオールとすると、ファイナルセットも6-3で制し、2時間42分の逆転勝利でベスト4進出を決めた。
試合後にズベレフはプレー内容を振り返り、数年前なら第1セットを失ったところで「間違いなくラケットを壊していた」とコメント。「もうラケットは壊さない」との力強い言葉に、かつての弱かった自分と決別する並々ならぬ決意と覚悟が感じられた。
その上で、若い頃は感情の起伏が激しく、年を重ねるごとに自制心を身に付けていった元世界1位のロジャー・フェデラー(スイス/2022年引退)と自身を重ねるようにこう続けた。
「ロジャーも昔は頻繁に怒りをあらわにしていたが、そこから変わっていって、やがて誰もが知っている“ロジャー・フェデラー”になった。どこかで意識が変わったのだろうね」
もっとも試合中の冷静さを身に付けることができたのは、21年3月に元恋人のブレンダ・パテアさんとの間に娘のマイラちゃんが誕生し、父親となったことが大きいとズベレフは明かす。また単純に“試合中にスポーツマンらしくない振る舞いをする選手”とは記憶されたくないとの考えから、コート上での言動にも気を配るようになったそうだ。
「父親になった今、良い手本になりたいと思っている。僕はテニスで人々の記憶に残る選手になりたい。コート上での成果や、自分が成し遂げたことで評価されたいんだ」
「オフコートで自分が取り組んでいる活動でも記憶されたい。自分と同じ一型糖尿病を持つ人々を支援する財団での活動や家族との取り組みには、人の役に立つものが多いと感じているし、世界中の人々の助けにもなっていると思う。過去の感情的な振る舞いで記憶されるよりも、良い行動を通じて覚えてくれる方がはるかに望ましい」
“記録にも記憶にも残る選手”になるべく、1人の父親として、そして1人のトップアスリートとして成熟した姿を見せているズベレフ。今後もさらなる活躍を期待したい。
文●中村光佑
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