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海外テニス

坂本怜「終わった...」から驚異の大逆転! 伊藤あおいも“フォアスラ”でファンを魅了し、共に全米OP予選初勝利<SMASH>

内田暁

2025.08.20

坂本(左)は幾度ものマッチポイントを凌ぎ、伊藤(右)は持ち味のフォアスライスを駆使して、全米OP予選1回戦を突破した。写真:内田暁

坂本(左)は幾度ものマッチポイントを凌ぎ、伊藤(右)は持ち味のフォアスライスを駆使して、全米OP予選1回戦を突破した。写真:内田暁

 8月24日の本戦開幕に先駆けて、18日に予選がスタートした今季最後の “テニス四大大会”全米オープン。19日の予選1回戦には日本勢9名が登場した。

 昨年の全米オープンジュニア部門ダブルス優勝者の坂本怜が、“大人”へと成長し、とてつもないカムバックを果たした。

 ワイルドカード(主催者推薦)で出場のテイラー・ジンク(アメリカ)に第1セットを奪われ、第2セットも2ブレークダウンの2-5で、相手サービス。しかもポンポンとサービスでポイントを奪われ、40-0の3連続マッチポイントに追い詰められた。

「終わった...」

 さすがの坂本もこの時は、半ば諦めていたという。

 ただ「終わった」と思うことと、試合を投げ出すのは別の話だ。

「色んな人...お母さんにお兄ちゃん、彼女も見に来てくれている。『もうちょい、頑張ろう』と思った」

 目の前のボールを追い、坂本らしい“シコさ”にフォアの強打を織り交ぜると、硬さの見える相手にミスが出始めた。3連続ポイントで追いついた坂本は、3度のデュース、4本のマッチポイントを凌ぎ、絶体絶命の窮状から驚異の復活を果たしたのだ。
 
 さらにゲームカウント4-5の相手ゲームでも、6度のデュース、2本のマッチポイントを凌ぎ、ついには5-5に追いついた。こうなれば、流れは坂本のもの。加えてファンの大歓声も、アウェーのはずの坂本を後押しする。続くゲームをラブゲームでキープした坂本が、最後のゲームではデュースを8度も重ねてブレーク。照明に火が灯り、他のコートの試合が終わり次々に観客が詰め掛けるなか、30分ほど前に「終わった」と思われた試合は、まさかの第3セットへと突入した。

 これで坂本が、一気に走るかと思われた最終セット。だが相手も、内に秘めた闘志をたぎらせ、立て直してきた。互いに、ベースラインでの粘り強さも、ドロップショットを打つ意外性も、ネットに出る勇気も示す総力戦。キープ合戦の引き締まった攻防のまま、10ポイントタイブレークへとなだれ込んだ。

 運命のタイブレークで、主導権を握ったのは、坂本である。3度目のマッチポイントでは、長いラリーから攻めに転じ、恐れを断ち切り前に出て、最後は浮き球を豪快に叩き込んだ。大きく跳ねる打球の行方を見届けると、大歓声を浴びながら、ゆっくり崩れるようにコートに倒れる195センチの長躯。その直後には跳ね起きると、コーチたちのいるコートサイドに、そして兄たちのいる逆サイドへと、それぞれトレードマークの“抜刀ポーズ”を披露した。

「好きなニューヨークに、もうちょっと長くいられてうれしい」

 勝利の瞬間に頭をよぎったのは、そんな思いだったという。
 
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