8月24日の本戦開幕に先駆けて、18日に予選がスタートした今季最後の “テニス四大大会”全米オープン。19日の予選1回戦には日本勢9名が登場した。
昨年の全米オープンジュニア部門ダブルス優勝者の坂本怜が、“大人”へと成長し、とてつもないカムバックを果たした。
ワイルドカード(主催者推薦)で出場のテイラー・ジンク(アメリカ)に第1セットを奪われ、第2セットも2ブレークダウンの2-5で、相手サービス。しかもポンポンとサービスでポイントを奪われ、40-0の3連続マッチポイントに追い詰められた。
「終わった...」
さすがの坂本もこの時は、半ば諦めていたという。
ただ「終わった」と思うことと、試合を投げ出すのは別の話だ。
「色んな人...お母さんにお兄ちゃん、彼女も見に来てくれている。『もうちょい、頑張ろう』と思った」
目の前のボールを追い、坂本らしい“シコさ”にフォアの強打を織り交ぜると、硬さの見える相手にミスが出始めた。3連続ポイントで追いついた坂本は、3度のデュース、4本のマッチポイントを凌ぎ、絶体絶命の窮状から驚異の復活を果たしたのだ。
さらにゲームカウント4-5の相手ゲームでも、6度のデュース、2本のマッチポイントを凌ぎ、ついには5-5に追いついた。こうなれば、流れは坂本のもの。加えてファンの大歓声も、アウェーのはずの坂本を後押しする。続くゲームをラブゲームでキープした坂本が、最後のゲームではデュースを8度も重ねてブレーク。照明に火が灯り、他のコートの試合が終わり次々に観客が詰め掛けるなか、30分ほど前に「終わった」と思われた試合は、まさかの第3セットへと突入した。
これで坂本が、一気に走るかと思われた最終セット。だが相手も、内に秘めた闘志をたぎらせ、立て直してきた。互いに、ベースラインでの粘り強さも、ドロップショットを打つ意外性も、ネットに出る勇気も示す総力戦。キープ合戦の引き締まった攻防のまま、10ポイントタイブレークへとなだれ込んだ。
運命のタイブレークで、主導権を握ったのは、坂本である。3度目のマッチポイントでは、長いラリーから攻めに転じ、恐れを断ち切り前に出て、最後は浮き球を豪快に叩き込んだ。大きく跳ねる打球の行方を見届けると、大歓声を浴びながら、ゆっくり崩れるようにコートに倒れる195センチの長躯。その直後には跳ね起きると、コーチたちのいるコートサイドに、そして兄たちのいる逆サイドへと、それぞれトレードマークの“抜刀ポーズ”を披露した。
「好きなニューヨークに、もうちょっと長くいられてうれしい」
勝利の瞬間に頭をよぎったのは、そんな思いだったという。
昨年の全米オープンジュニア部門ダブルス優勝者の坂本怜が、“大人”へと成長し、とてつもないカムバックを果たした。
ワイルドカード(主催者推薦)で出場のテイラー・ジンク(アメリカ)に第1セットを奪われ、第2セットも2ブレークダウンの2-5で、相手サービス。しかもポンポンとサービスでポイントを奪われ、40-0の3連続マッチポイントに追い詰められた。
「終わった...」
さすがの坂本もこの時は、半ば諦めていたという。
ただ「終わった」と思うことと、試合を投げ出すのは別の話だ。
「色んな人...お母さんにお兄ちゃん、彼女も見に来てくれている。『もうちょい、頑張ろう』と思った」
目の前のボールを追い、坂本らしい“シコさ”にフォアの強打を織り交ぜると、硬さの見える相手にミスが出始めた。3連続ポイントで追いついた坂本は、3度のデュース、4本のマッチポイントを凌ぎ、絶体絶命の窮状から驚異の復活を果たしたのだ。
さらにゲームカウント4-5の相手ゲームでも、6度のデュース、2本のマッチポイントを凌ぎ、ついには5-5に追いついた。こうなれば、流れは坂本のもの。加えてファンの大歓声も、アウェーのはずの坂本を後押しする。続くゲームをラブゲームでキープした坂本が、最後のゲームではデュースを8度も重ねてブレーク。照明に火が灯り、他のコートの試合が終わり次々に観客が詰め掛けるなか、30分ほど前に「終わった」と思われた試合は、まさかの第3セットへと突入した。
これで坂本が、一気に走るかと思われた最終セット。だが相手も、内に秘めた闘志をたぎらせ、立て直してきた。互いに、ベースラインでの粘り強さも、ドロップショットを打つ意外性も、ネットに出る勇気も示す総力戦。キープ合戦の引き締まった攻防のまま、10ポイントタイブレークへとなだれ込んだ。
運命のタイブレークで、主導権を握ったのは、坂本である。3度目のマッチポイントでは、長いラリーから攻めに転じ、恐れを断ち切り前に出て、最後は浮き球を豪快に叩き込んだ。大きく跳ねる打球の行方を見届けると、大歓声を浴びながら、ゆっくり崩れるようにコートに倒れる195センチの長躯。その直後には跳ね起きると、コーチたちのいるコートサイドに、そして兄たちのいる逆サイドへと、それぞれトレードマークの“抜刀ポーズ”を披露した。
「好きなニューヨークに、もうちょっと長くいられてうれしい」
勝利の瞬間に頭をよぎったのは、そんな思いだったという。