今年８月に男子テニス元世界ランキング４位のホルガー・ルネ（デンマーク／現15位）のフィットネストレーナーに就任したマルコ・パニチ氏（イタリア）が、海外テニスサイト『UBITENNIS』のインタビューで左足を負傷した同選手の近況を明かしている。

　22歳のルネは10月に出場したツアー大会「BNPパリバ・ノルディック・オープン」（スウェーデン・ストックホルム／室内ハードコート／ATP250）でベスト４に進出したものの、ユーゴ・アンベール（フランス／現37位）との準決勝で左足のアキレス腱を負傷。第２セット途中でのリタイアを余儀なくされていた。

　直後にはSNSでアキレス腱を断裂したことを明かしたルネだったが、その翌週には同箇所の手術成功を報告。現在は懸命なリハビリに励んでおり、先日には左足に固定具を装着して行なったコート上でのヒッティングや、メディシンボールを使ったトレーニングの様子を動画で公開していた。

　過去にノバク・ジョコビッチ（セルビア／現４位）やヤニック・シナー（イタリア／同２位）といったトップ選手をサポートした経験を持つパニチ氏も「常に全力を尽くす」ルネの回復ぶりには太鼓判を押す。これまでのプロセスを振り返りながら次のように語った。

「ホルガーは大きなポテンシャルを秘めた選手。爆発的で調整力に優れ、本能的な力強いプレーができる。ただ一方で、必要のない場面でもエネルギーを使いすぎる傾向がある。最初の課題は、そのエネルギーの使い方をコントロールする手助けをすることだった」
  「彼は再び自分の望み通りに動けるようになってきている。若いからか身体の反応が良く動きもスムーズだし、変化への適応も早い。あとは彼の強度を引き出しつつ、それを効率的に使えるようにすることがカギになる」

　実はルネと仕事を始めた当初、「難しい時期にあった」同選手の動きを見て、ケガの予兆を感じる瞬間があったと名トレーナーは言う。「疲労やどこかをかばう動作、小さな硬さなどが重なり、彼本来の表現力が制限されていたように感じた」とコメント。その上で焦りも垣間見える22歳に釘を刺すようにこう続けた。

「回復が必要な時には“規律”も求められる。段階的に負荷をかけ、強度をコントロールしながら、適切な時間配分を守ること。状況によってはあえてペースを落とさせることが、正しい判断となる場合もある。

　今は左右の動きの対称性やバランスに加え、自信を取り戻すことも大事だ。彼のような爆発的なタイプの選手は、“身体が自由に動いている”と感じられなければならない。身体の支えとなる動作や加速力に再び確信が持てるようになれば、状況は大きく変わるだろう」

　既報の通りルネの母親でツアーにも帯同しているアネケ氏は息子の負傷直後に「復帰には３～６カ月ほどを要する」との見通しを示していたが、回復次第ではそれ以上かかる可能性もあろう。パニチ氏の言葉通り、とにかく今は焦らずリハビリに専念してもらいたい。

文●中村光佑

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