10代の頃から女子テニス界を牽引し続けている元世界ランキング１位のイガ・シフィオンテク（ポーランド／現２位）。2025年シーズンもツアー３勝を挙げ、７月の「ウインブルドン」（イギリス）では決勝でアマンダ・アニシモワ（アメリカ／現４位）を6-0、6-0で完封して四大大会６勝目をゲットするなど、再び目覚ましい活躍を遂げた。

　しかし今季は決して全てが順風満帆というわけではなかった。特に年初は苦戦が続き、得意のクレーコートシーズンでも「全仏オープン」（フランス／四大大会）４連覇を逃すなど、前半戦は無冠。それでも夏場以降には復調し、ウインブルドン優勝後も「シンシナティ・オープン」（アメリカ／WTA1000）と「韓国オープン」（韓国／WTA500）の２大会を制覇した。

　過去にシモナ・ハレップ（ルーマニア／25年引退）や大坂なおみ（日本／現16位）ら複数の元世界１位を指導し、昨年10月にシフィオンテクのコーチに就任した名将ウィム・フィセッテ氏（ベルギー／45歳）は、出演した「Netflix」のドキュメンタリー番組『Break Point』で24歳のクレーシーズンにおける不調について、次のように評している。

「常に浮き沈みは付き物で、それもテニスの一部。それでもトップ選手たちには低迷期から非常に早く抜け出す力がある。今年のイガもまさにそうだった。クレーシーズンは彼女にとって“失うものしかない時期”だったし、期待値があまりにも高かった」

「その期待に応えるのは、決して簡単なことではない。昨年彼女はマドリード、ローマ、全仏を制したが、その関係から今年はポイントを積み上げることができず、状況が悪くなる可能性しかなかった。それにクレーで非常に良いプレーをする（ココ・）ガウフ（アメリカ／現３位）や（アリーナ・）サバレンカ（ベラルーシ／現１位）など他にも優れた選手はたくさんいるから、なおさら難しかった」
  　一方で今季のシフィオンテクの成功は非常に高い価値を持つと名コーチは言う。「2025年はイガにとって歴史に残る年になった。誰も予想していなかったウインブルドン優勝、しかもそれをあんな勝ち方で成し遂げたのは特別な功績だ。10年ないしは20年、あるいは30年後も語り継がれるかもしれない。本当に現実とは思えないほどだった。ウインブルドンだけを見ても、今季は素晴らしい年だったと言える」

　私が彼女と仕事を始めた時の目標の一つに、“より速いサーフェスでのプレーを向上させ、より快適に戦えるようになること”というのがあったが、それは明確に達成され、シンシナティでの結果にも表れた。これは今後数年間においても、イガにとって『自分はサーフェスに関係なく、常にタイトル争いができる』という自信につながるはずだ」

　またシーズンの途中にはシフィオンテクの中でさらにプレーを改善したいという“マインドチェンジ”が生じ、以前に比べサービスから主導権を取れるようになったことも成功につながったとフィセッテ氏。最後はチームとしての今後の方向性を示す形で「2026年も今の状態を継続していきたい」と力強く締めくくった。

文●中村光佑

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