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海外テニス

全米4強シェルトンの父親が明かす指導者としての哲学「人間として成熟すれば、後からテニスはついてくる」<SMASH>

内田暁

2023.09.07

シェルトンは、パワーと精度を兼ね備えたサービスと破壊力抜群のフォアハンドを武器に、全米オープンでベスト4に進出。(C)Getty Images

シェルトンは、パワーと精度を兼ね備えたサービスと破壊力抜群のフォアハンドを武器に、全米オープンでベスト4に進出。(C)Getty Images

 国内大会だけで、世界ランクトップ100入りした20歳——。

 ベン・シェルトンの名が最初に広く知られたのは、そんな数奇なキャリアのためだった。

 2022年11月にATPチャレンジャー3大会連続優勝し、一気に100位の壁を突破。キャリア通算22大会でのスピード出世でもある。

 冒頭で書いた通り、彼は今年に入るまで、母国アメリカでしか試合をしたことがない。それどころか昨年末まで、パスポートすら持っていなかったというのだ。

 それでもそこは、数々のATPツアーや下部大会を大地に内包する、テニス大国の強み。

 フロリダ大学に在学するシェルトンは、昨年はチャレンジャー11大会に加え、ワイルドカードを得てシンシナティ・マスターズと全米オープンにも出場。シンシナティの2回戦では、当時世界5位のキャスパー・ルードを破りファンや関係者を驚かせた。

 193㎝の長身から叩き込むサービスは、スピードと精度を兼備。フォアハンドは破壊力に満ちている。そんな左腕の大型新人が今季、満を持して世界進出。初出場の全豪オープンでいきなりベスト8に躍り出て、さらなる注目を集めた。
 
 ただその後は、特筆すべき結果は残していない。初めて行く国や町に、初めて肌で触れる文化。レッドクレーも天然芝も、全てが初めての体験だ。

 それらサーフェスの変化以上に、彼が苦しめられたのは「時差や、スケジュールの組み方」だったという。この7か月間、ツアーレベルでは2回戦が最高戦績に留まったのも、旅疲れが理由の一つにあっただろう。

 かくして数多くの場数を踏み、試行錯誤も繰り返してきた彼の情熱とポテンシャルが、母国開催のグランドスラムで、一気にほとばしったのは不思議ではない。今大会では3回戦で時速147マイル(約236キロ)の最速サービスを叩き出すと、二日後の4回戦では、自身の記録を更新する149マイル(約240キロ)のサービスを連発。磨きを掛けたというネットプレーも効果的に決め、ベスト4へと駆け上がった。

 こうなると誰もが抱くのは、これほどの才能の原石が、なぜ20歳になるまで海外に行くことが無かったのか……という当然の疑問である。
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