テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権98th」（10月28日～11月５日／東京・有明／ハードコート）は11月４日に第８日を迎え、女子シングルス決勝に続いて男子シングルス準決勝を実施。第７シードの白石光と、第５シードの徳田廉大が勝利し、最終日の決勝にコマを進めた。

　早稲田大学を卒業してプロ１年目の白石光は、予選から勝ち上がってきた上杉海斗に2-6、6-3、6-2で逆転勝ちした。ダブルススペシャリストとして世界レベルで戦う上杉は、シングルスのランキングは出場大会の関係で低いものの、類まれな攻撃力を誇る選手だ。

　第１セットは強力なサービスと、ネットを絡めた速いテンポの攻めで上杉が圧倒。「序盤から上杉さんがグイグイ攻めてくるとわかっていたが、それを超える攻撃力、サーブ力だった」と白石が舌を巻くほどで、上杉が簡単に先取する。

　しかし第２セットに入ると、「慣れてきた」という白石が、サービスのコースを予測して先に動くなど、戦術家らしさを発揮し始める。第２ゲームで初のブレークに成功すると、パスを無理に抜かずに足元に沈めたり、低く打ちにくいボールを送ったりと、相手の嫌がるところを突く配球でペースを獲得。徐々に上杉のスタミナが切れてきたこともあって、白石が２セット連取で逆転した。

　世界を目標に据える白石だが、「日本でのタイトルにもこだわっている」という。インターハイ、全日本ジュニア、インカレなど、ほとんどの“全日本”タイトルを手にしてきた。「決勝に来られたのは早いと正直思っているが、来年も来られるとは限らない。数少ないチャンスを生かしたい」。23歳での天皇杯獲得に照準を合わせる。
  　もう１つの準決勝は、徳田廉大が34歳のベテラン片山翔に6-4、6-4で快勝した。共に頑強なストローカーとあって、見応えのあるラリーが展開されたが、徳田が球威と戦術の両面で片山を上回った。

　厚い当たりのフラット系の強打が徳田の最大の武器だが、「片山さんも低いボール好きで、本当にうまい。付き合うと相手に有利なので、高いボールを混ぜていった」と徳田。それを片山のバックに入れて、甘いボールを引き出し、チャンスでは得意のフラットドライブで鮮やかなエースを奪う。

　第１セットを順調に先取した後、第２セットは１stサービスの確率が悪化し、一時1-4とリードを許したが、ニューボールになったタイミングで「ギアを上げて前に行ったりしたら、相手が崩れてくれて流れをつかめた」と徳田。きっちりブレークバックすると、そこから５ゲーム連取で試合を締めた。

　25歳の徳田は、2018年に世界ランクを自己最高の289位まで上げたが、その後波に乗れず、特に昨年からは左ヒザのケガに泣かされ、現在は520位まで落としている。今年もケガに苦しみ、この３カ月は試合には出ず、治療と練習に専念して今大会に備えてきた。

　全日本での最高成績は18年に記録した準優勝。第２シードだったその時は「準決勝に勝ってホッとしてしまった」ため、決勝は不本意なプレーに終わった。５年ぶりに戻ってきた決勝の舞台。徳田は「ぜんぜん満足していない。今回は優勝しか見えていない」と雪辱に燃えている。

◆男子シングルス準決勝の結果（11月４日）
〇白石光（SBCメディカルグループ）[7] 2-6 6-3 6-2 上杉海斗（江崎グリコ）[Q]●
○徳田廉大（イカイ）[5] 6-4 6-4 片山翔（伊予銀行）[9]●

※[　]内の数字はシード順位

取材・文●渡辺隆康（スマッシュ編集部）

【全日本テニス選手権PHOTO】2023年の全日本女王は加治遥！男子準決勝は白石光と徳田廉大が勝利！

【PHOTO】全日本テニス選手権大会５日目の模様を厳選ショットで紹介！

【全日本テニス選手権PHOTO】女子シングルスは加治遥と西郷里奈が決勝進出！