先日行なわれた「全仏オープン」の男子シングルスで殊勲の大会連覇を果たした世界ランキング２位のカルロス・アルカラス（スペイン／22歳）。その類まれな強さに、四大大会で６度の優勝を経験した元世界王者のボリス・ベッカー氏（ドイツ／57歳）も舌を巻いている。

　現地６月８日に行なわれた全仏オープン決勝でアルカラスは、大会決勝史上最長の５時間29分にも及ぶ死闘の末に同世代の王者ヤニック・シナー（イタリア／同１位／23歳）を撃破。２セットダウンかつ３つのチャンピオンシップポイントを握られたところから大逆転勝利を収めるという離れ業をやってのけ、テニス界を驚かせた。

　海外メディア『UBITENNIS』によると、ベッカー氏は現在開催中の男子テニスツアー公式戦「ボス・オープン」（６月９日～15日／ドイツ・シュツットガルト／芝／ATP250）で女子元世界９位のアンドレア・ペトコビッチ氏（ドイツ／37歳）と共に生収録したポッドキャストにて、パリでタイトル防衛に成功したアルカラスを「史上最高の選手だ」と大絶賛したという。

「ショットのバリエーションやパワー、巧みなボールタッチ。これほどの武器を持った選手は、テニスの歴史で他にいない。ただ彼の本当の限界はまだ先にある」

　まだ20代前半のアルカラスだが、すでに獲得したツアータイトルは20個。その内訳は四大大会が先の全仏オープンを含め５勝、マスターズ1000が７勝、ATP500が６勝、ATP250が２勝となっている。また、昨年のパリ五輪では決勝でノバク・ジョコビッチ（セルビア／元１位／現５位）に敗れたものの銀メダルを獲得した。
  　これらの凄まじい功績を踏まえ、ベッカー氏は改めてアルカラスへの称賛の言葉を続ける。

「彼は天才だ。彼は誰かが自分に挑んできた時に逆に刺激を受け、モチベーションが高まると、他の誰も届かない次元へと到達できる」

　ちなみにアルカラスとシナーがパリで繰り広げた凄まじい戦いは数日たった今も多くのファンに余韻を残しているが、それに対してベッカー氏は「世界中がアルカラスとシナーの決勝について語っている。これは我々のスポーツにとって大きな賛辞だ」とご満悦の様子だ。

　一方で勝利目前から大逆転負けを喫したシナーの悔しさが癒えるには、まだしばらく時間がかかるだろうと同氏は考えている。

「シナーは今回の敗戦から立ち直るのに１年はかかるだろう。全仏のコートに戻ってくるまで、その苦い記憶は消えないと思う。仮にそれまでの試合で好成績を残していたとしても、心の中には今回の敗戦がずっと残るはずだ」

　シナーは悔しさを糧に、アルカラスはさらなる高みを目指して、次代のテニス界を担う２人の物語はまだ始まったばかりだ。

文●中村光佑

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