格闘技・プロレス

BASARA “存続の危機”から史上最高動員へ 背水の陣で挑んだ後楽園決戦「カッコつけててもしゃあないんでね、僕らみたいな団体は」

橋本宗洋

2025.08.14

メインでは社長に就任した中津良太と営業部長の塚本拓海が対峙し、前者に軍配が上がった。写真:橋本宗洋

 このままでは団体が存続できなくなる。トップがはっきり危機を訴えたのはインディー団体・プロレスリングBASARAである。

 BASARAはDDTグループのユニオンプロレス解散を受け、木高イサミが代表となって2015年に設立、翌年に旗揚げ戦を開催した。
 
 BASARA=バサラの意味は辞書的には遠慮なく勝手に振る舞うこと、派手に見栄を張ることとされている。団体の打ち出しとしては"傾奇者"の集団。とにかく自由奔放で選手個々が考える"面白いプロレス"が全開に。

 その意味では"プロレスラーの理想郷"とも言えるリングだ。時には東大卒の現役弁護士レスラーがリング上でプロレス界のトピック(ゴシップ?)をネタに裁判を展開したりもする。

 アルコール・ソフトドリンク飲み放題付き興行「宴」も、この団体にしかない独特の盛り上がりを見せている。だが2019年にDDTグループからの独立を果たした矢先、2020年にコロナ禍が始まり、観客動員が減ってしまう。その後も客足は戻らず。現状、興行の半数近くが赤字だという。

 そんな状況を打開するため、BASARAは6月から新体制に移行した。団体を運営する合同会社の代表社員はイサミのままだが、新たに中津良太が社長に就任。合わせて塚本拓海が営業部長、中野貴人が選手会長を務めることに。団体のシングル王座・ユニオンMAXの現チャンピオンでもある中津は、その人望を高く評価されての社長就任だ。

 現役選手3人が要職につく新体制。記者会見で危機感を口にした中津は「所属(選手)全員の意識を変えていきたい。10年前、旗揚げしたばっかりの時の気持ちでもう一度。みなさん一から考え直してもらって。いま背水の陣なので」と選手たちに呼びかけた。

 一方で、リング上に関しては大きな変化はない、ほぼすべて残していくと語っている。ド迫力も爆笑も通を唸らせるテクニックも見せられるのがBASARA。試合内容に関しては自信があるというわけだ。だからこそ、見にきてもらうきっかけが必要だ。

 旗揚げしたばかりの頃、イサミは「BASARAがなくなることがあったら、自分もプロレスをやめます」と言っていた。ユニオンの解散を受け、それだけの思いで作った団体。新体制でも「最終的な責任を持つのは自分」だが、経営の全権を譲って選手に専念するというのは相当な覚悟だったはずだ。
 
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「BASARAを愛する力がグッと固まってこれだけの人になったんじゃないかと」